2012 Fiscal Year Annual Research Report
炎症応答と骨破壊の両プロセスを包括して制御できる炎症性骨破壊治療法の確立
Project/Area Number |
23689075
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 一男 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00436643)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 骨代謝 / 関節リウマチ / 破骨細胞 / 骨芽細胞 / Th17細胞 |
Research Abstract |
関節リウマチや歯周病などの慢性炎症に伴う骨破壊疾患は、『免疫異常による炎症』と『異常な骨破壊』という二つの病的現象に依存している。本研究課題では、炎症性T細胞サブセットであるTh17細胞の分化必須因子IκBζに焦点を当て、「Th17細胞性炎症応答」と「破骨細胞性骨破壊」の両プロセスを包括して制御できる治療法の基盤確立を目指す。本課題を遂行するにあたり、当該年度では以下について実施した。 1. IκBζコンディショナルノックアウト(CKO)マウスの作製:欧州条件変異マウス作成プログラム(EUCOMM)のIκBζ floxed ES細胞株を用いて、キメラマウス作製をした。 2. IκBζによる破骨細胞分化制御の分子機構の解析: 1) 破骨細胞分化に関わるIκBζ標的遺伝子を網羅的トランスクリプトーム解析より探索した。発現変動の認められた遺伝子に関して、過剰発現実験・RNAi実験を通して検討を行った。2)破骨細胞において抗IκBζ抗体、各種修飾ヒストン抗体、転写共役因子に対する抗体を用いてChIP解析を行い、IκBζ標的遺伝子のクロマチン構造変化を検討した。なお抗IκBζ抗体に関してはより適切な高Affinity抗体の作製にも着手している。 3. 炎症性骨破壊プロセスに関わるIκBζの機能解析: IκBζ ノックアウト(KO)マウスならびに骨髄キメラマウスを用いて、コラーゲン誘導性関節炎を実施し、関節炎病態を炎症応答と骨破壊の両側面において評価した。具体的には、1)踵関節部の腫脹と発赤による炎症の評価、2)炎症性サイトカイン、ケモカインならびに各Immunogloblinクラスの定量的測定、3)病理組織標本を用いた組織学的評価、4)病理組織標本解析とμCT解析による関節骨破壊および傍関節の骨粗鬆症の評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度にEUCOMMからのES細胞株の納品に時間を費やしたが、その後の作業は順調に進み、本年度末にキメラマウスの作製が完了した。当ES細胞はC57B6 backgroundであるため、各種のCre発現マウスとの交配を早急に進める事で、IκBζ CKOマウスの作製も速やかに遂行できると考えられる。IκBζ KOマウスから単離した初代培養実験により、破骨細胞分化と骨芽細胞におけるIκBζ の機能解析に関しては、概ね計画通り進行しており、興味深い成果が得られつつある。また、コラーゲン誘導性関節炎モデルを用いた動物実験も着手しており、その評価系も順調に確立でき、IκBζ KOマウスを用いた実験からデータが蓄積されつつある。今後、cKOマウスを用いた実験結果と統合することで、慢性炎症におけるIκBζ の機能が生体レベルで検証できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
IκBζ cKOマウスの作製、およびcKOを用いたコラーゲン誘導性関節炎モデルを実施し、炎症性骨破壊におけるIκBζの生理的機能を評価し、炎症性骨破壊治療におけるIκBζの分子標的としての有効性を生体レベルで検証する。またIκBζが他の慢性炎症病態にどのように関与するかについても把握すべく、関節リウマチ以外の自己免疫疾患における骨・免疫間相互作用の実態解明にも着手する。cKOマウスの解析を通してIκBζが機能する組織・細胞種を見出し、骨代謝細胞及び滑膜線維芽細胞といった免疫系以外の組織細胞における、IκBζ標的遺伝子の同定およびその機能解析を進める。さらにChIP法によりIκBζ標的遺伝子の発現制御メカニズムをエピジェネティクスの観点より検証する。最終的に関節リウマチといった慢性炎症に対する治療ターゲットとなりうるIκBζ標的遺伝子を探索し、その同定並びに制御法の確立を目指す。なお、当初低分子化合物ライブラリーは東京医科歯科大学 生体材料工学研究所所有のライブラリーを使用する予定であったが、本年度に研究代表者が東京医科歯科大学から東京大学大学院医学系研究科へと異動となった。そのため低分子化合物ライブラリーに関しては、当初の計画とは別ルートからの譲渡を検討している。
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Research Products
(7 results)