2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規の歯根膜幹細胞表面抗原および歯根膜マーカーを活用した歯周組織再生法の開発
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23689077
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
和田 尚久 九州大学, 大学病院, 講師 (60380466)
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Keywords | 歯根膜組織 / 間葉系幹細胞 / 再生 |
Research Abstract |
歯根膜幹細胞に特異的なマーカー分子の同定および機能解析に有用なヒト歯根膜細胞クローンの樹立を目的として、不死化した歯根膜細胞から得られた各細胞クローンのキャラクタライゼーションを行った。 先ず当研究室にて樹立したヒト不死化歯根膜細胞(Fujii et al.,2006)から限外希釈法により22個のクローン細胞株を単離した。各クローンの多分化能を骨芽細胞、脂肪細胞および軟骨細胞の分化誘導アッセイ系により比較検討した結果、全ての分化実験において分化を示した“多分化能を有する歯根膜細胞クローン”と、いずれにおいても分化を示さなかった“分化能が著しく低い歯根膜細胞クローン”の各2クローンずつを抽出した。両クローンは、ヒト歯根膜細胞に特徴的な紡錘形を呈しており、qRT-PCR法にて歯根膜関連マーカーを発現していた。一方で、分化能の低い歯根膜細胞クローンと比較して、多分化能を有する未分化な細胞クローンにおいて、qRT-PCR法にて幹細胞マーカーOct4, NANOG, N-cadherin, Endoglinおよび神経堤細胞マーカーのSLUG, CD49D, p75NTRの発現が、また、フローサイトメトリー分析法においても間葉系幹細胞表面抗原マーカーのCD73,CD90,CD105,CD146,CD166の発現強度が高かった。さらには、各クローンをβ-TCPとともにマウス皮下移植した実験では、多分化能を有する未分化な細胞クローン群において硬組織様組織形成が認められた。 以上のことから、ヒト歯根膜細胞株の中には“多分化能を有する未分化な歯根膜幹細胞クローン”および“分化能が著しく低い歯根膜幹細胞クローン”が存在することが明らかになった。現在、この2つの特徴の異なる歯根膜細胞クローンの遺伝子発現量の差を網羅的に解析し、歯根膜幹細胞集団に特異的なマーカー分子の同定および機能解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の初年度の予定では、当研究室にて樹立したヒト不死化歯根膜細胞(Fujii et al.,2006)から限外希釈法によりクローン細胞株を単離し、各クローン群のキャラクタライゼーションを行い、多分化能を有する歯根膜幹細胞クローンと分化能が低くかつ歯根膜細胞マーカーを発現している細胞クローンを抽出するとしていた。実績概要に示す通り、クローンの抽出およびそのキャラクタライゼーションはin vitro実験系では詳細に検討することができた。一方で、in vivoマウス皮下移植モデルによる解析が予定より時間がかかったため予定の期日より遅れが生じたが、最終的には各クローンのキャラクタライゼーションにより、“多分化能を有する歯根膜細胞クローン”と、いずれにおいても分化を示さなかった“分化能が著しく低い歯根膜細胞クローン”の各2クローンずつを同定でき、歯根膜幹細胞に特異的なマーカー分子の同定に有用な細胞ツールの樹立に成功したと考えている。また、当初の予定では、歯根膜幹細胞に特異的に発現する細胞表面抗原タンパクの同定にプロテオーム解析を予定していたが、遺伝子レベルでの網羅的解析を平成24年度に終了しており、細胞膜表面抗原遺伝子の差異的発現も認められた。以上のことから、当初の予定を一部変更しながら、おおむね達成できていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、今回樹立した“多分化能を有する歯根膜細胞クローン”と、いずれにおいても分化を示さなかった“分化能が著しく低い歯根膜細胞クローン”の各2クローンを用いて、歯根膜幹細胞に特異的に発現する細胞膜表面抗原および転写因子や細胞機能に関わる分子の同定を目的として、マイクロアレイ法を用いて網羅的に遺伝子解析をおこっている。 “多分化能を有する歯根膜細胞クローン”において発現の高い遺伝子群には、過去に報告の少ない細胞膜表面抗原や転写因子が含まれていた。当初の予定よりやや遅れが生じているが、siRNA法を用いた方法により“多分化能を有する歯根膜細胞クローン”における候補遺伝子のノックダウンを行い、多分化能や幹細胞マーカーの発現に対する影響を検討するスクリーニング法を予定している。これにより、網羅的にスクリーニングができると考えられる。その後、細胞に候補遺伝子の導入を行い、in vitro実験系およびin vivoマウスモデルを用いて詳細に機能解析をする予定としている。
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[Presentation] Induction of stem/undifferentiated cells from human periodontal ligament cells by Sema3A.2012
Author(s)
Wada N, Maeda H, Hasegawa D, Gronthos S, Bartold PM, Menicanin D, Fujii S, Wada H, Tomokiyo A, Monnouchi S, Akamine A.
Organizer
The Australian Health and Medical Research Congress 2012
Place of Presentation
Adelaide Convention Centre, Adelaide, Australia
Year and Date
20121125-20121128
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