2011 Fiscal Year Research-status Report
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23700014
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
藤原 洋志 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80434893)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | アルゴリズム / 組合せ最適化 / 数理工学 / 情報基礎 / モデル化 / オンライン最適化 |
Research Abstract |
スキーレンタル問題は、将来何度スキーに行くか分からない状況下で、スキー板のレンタル・購入の選択によりコストを最小化する問題である。その拡張の一つである多状態スキーレンタル問題は、「レンタル」「購入」以外の中間オプションを許す問題であり、例えば省電力など多くの実世界の問題を含んだ汎用的な枠組みである。本問題において、プレーヤーの戦略はオプション間の遷移を表す決定木とみなすことができ、最適戦略の導出は「競合比」を目的関数とする木生成問題である。 この問題においては、インスタンス(つまり各オプションの設定情報)がプレーヤーの損得に重大な影響を及ぼす。プレーヤーが常に最適戦略をとったとしても、インスタンスの違いによって、損得が大きく変わってくる。我々の研究では、プレーヤーにインスタンスが前もって与えられる場合の最適戦略及び性能評価に初めて焦点を当てた。 我々は、(I)オプション数が固定された場合について、プレーヤーにとって最も易しいインスタンスとそれに対する最適戦略の理論的導出、及びその理論的性能評価、(II)オプション数が3の場合と4の場合それぞれについて、プレーヤーにとって最も難しいインスタンスとそれに対する最適戦略の理論的導出、及びその理論的性能評価を与えた。(I)の結果からの自然な帰結として、オプションの数を任意とした場合についての最適戦略の理論的性能限界が明らかとなっている。また(II)の結果はとりもなおさず、多くの研究者が注目するところの「競合比の一致する上下界」を、この問題に関して初めて証明している。我々はこれらの結果をまとめて、評価の高い国際会議 ISAAC2011 で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
多状態スキーレンタル問題について Augustine らは、与えられたインスタンスに対して最適な戦略を計算するアルゴリズムを設計した。このアルゴリズムはオプション数の多項式時間で動作するため、容易に最適戦略を得ることができる。しかしながら、インスタンスと、それに対する最適戦略との理論的相関についてはほとんど知られていなかった。我々は、戦略とインスタンスの両方を変数と見なす最適化問題を定式化することにより、この点を明らかにした。 我々は、(I)オプション数が固定された場合について、プレーヤーにとって最も易しいインスタンスとそれに対する最適戦略の理論的導出、及びその理論的性能評価、(II)オプション数が3の場合と4の場合それぞれについて、プレーヤーにとって最も難しいインスタンスとそれに対する最適戦略の理論的導出、及びその理論的性能評価を与えた。 特に(I)の結果は省電力設計に応用がある。多状態スキーレンタル問題は、複数の省電力モードを装備したシステム上での消費電力最小化問題と見なすことができる。ここで複数の省電力モードを装備したシステムとは、「スタンバイ」「休止状態」を装備した Windows パソコンが例に挙げられる。目的は、ユーザが不確かな時間だけ離席してから戻ってくるまでの消費電力の最小化である。インスタンスは省電力モードの設定であり、戦略はどのタイミングでどのモードに自動的に遷移するかを示す。(I)の結果からの自然な帰結として、オプションの数を任意とした場合についての最適戦略の理論的性能限界が得られるが、これは省電力の文脈においては、どれだけ省電力モードを増やしてもそこから期待される省電力性能に限界があるということを意味する。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は多状態スキーレンタル問題について、オプション数が3の場合と4の場合それぞれについて、プレーヤーにとって最も難しいインスタンスとそれに対する最適戦略の理論的導出及びその理論的性能評価を与えた。しかしながら、一般のオプション数についての解析は、未解決問題として残されている。その具体的方針としては、我々がオプション数が3の場合と4の場合について行った定式化を抜本的に見直すことから始め、解(つまりインスタンスと最適戦略)についての一般的な法則を見つけ出し、帰納的にそれが正しいことを示す。 一般化探索木問題に対し、Hu-Tuckerアルゴリズムをベースとした高速解法の設計を行う。Larmoreらは、生成される木に制限がある場合について研究し、非減少かつ凸な関数列に対するHu-Tuckerアルゴリズムの変種を設計している。この設定においては我々の動的計画法より高速である。我々は、このアルゴリズムはもっと広い入力クラスに対しても適用可能であると予想している。入力クラスを拡げた場合に、どこまで正しい解を出力するか解明しなければならない。さらに、このアルゴリズムと動的計画法を平行して走らせることにより、扱える入力クラスの拡大を目指す。 多状態スキーレンタル問題、一般化探索木問題、一般化Huffman木問題について、最適解の視覚化ツールの開発を行う。java上で動作するクラスライブラリ JUNG を用い、Webアプレットとして設計する。一般化Huff木問題の求解については多項式アルゴリズムがないが、これは整数計画問題に定式化した上で外部ソルバで解かせる。一般化探索木問題に対し、Hu-Tuckerアルゴリズムをベースとした高速解法の設計を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
得られた結果を順次論文にまとめた上で国際会議や学会にて発表するための旅費を研究費から支出する。具体的には、評価の高い国際会議である、SODA(主に北米にて開催), ESA(主に欧州にて開催), ICALP(主に欧州にて開催), ISAAC(主にアジアにて開催), COCOON(主にアジアにて開催)などである。学会としては、情報処理学会アルゴリズム研究会や電子情報通信学会コンピュテーション研究会、およびオペレーションズリサーチ学会を予定している。さらに、研究打ち合わせが必要な場合は適宜研究費から支出する。雑誌の別刷りについても研究費から支出する。掲載料が必要な学術雑誌については、それも支出する。 多状態スキーレンタル問題において、プレーヤーにとって最も難しいインスタンスとそれに対する最適戦略の理論的導出及びその理論的性能評価には、非線形計画問題を解くことが必要である。そのためにはNUOPTやMathematicaなどのパッケージを購入して行う。最初に数値的な計算を行って結果の見当を付けた後で、解析的な計算により結果の妥当性を検証する。Mathematicaについては有償サポートの費用も研究費から支出する。また、多状態スキーレンタル問題の計算を論文執筆用パソコンの上で動作させると膨大なリソースを消費し支障をきたすので、計算については専用のパソコンを購入しその上で行う。 多状態スキーレンタル問題、一般化探索木問題、一般化Huffman木問題の最適解の視覚化ツールについては、その開発の一部を委託する場合がある。その際の謝金は研究費から支出する。
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Research Products
(6 results)