2012 Fiscal Year Research-status Report
有限時間ビザンチン故障に対する耐故障分散アルゴリズムに関する研究
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23700019
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山内 由紀子 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 助教 (10546518)
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Keywords | 分散システム / 故障耐性 / ビザンチン故障 / 乱択アルゴリズム |
Research Abstract |
本年度までの研究経過において,ビザンチン故障耐性を持つ分散システムを検討する上での新たな課題として,移動ビザンチン故障に対する耐性を発見した.移動ビザンチン故障とは,故障計算機の集合が時々刻々と変化する故障モデルである.故障をある種の移動するエージェントと考えれば,移動ビザンチン故障はコンピュータを不正に操作するボットやウィルスの感染,ハッキングなどを考慮していると言える.従来のビザンチン故障は故障計算機は永久に不正な振る舞いをするのに対し,本研究が着目する有限時間ビザンチン故障は,故障が継続的ではあるが一時的である場合を考慮したものである.移動ビザンチン故障もまた,各計算機に一時的に滞在する故障エージェントを考慮しており,有限時間ビザンチン故障との関連性がある.本年度は移動ビザンチン故障が存在する分散システムにおいて,計算機間で合意を形成する合意問題に取り組み,結果を得ている. 本研究の目的の1つに,分散環境における乱択アルゴリズムの効果がある.本年度は計算機間の通信ネットワークの変化がランダムである場合のエージェント集合問題や,ランダムなスケジューラ下での分散アルゴリズムの乱択化の効果についても結果を得ており,分散アルゴリズムの理論研究の主要な国際会議の1つであるDISCにおいて口頭発表を行った. その他,通信ネットワークがランダムに変化する分散システムにおけるエージェントの集合問題,自律分散ロボット群によるパタン形成,個体群プロトコルにおけるリーダー選挙のメモリ複雑度など,分散アルゴリズム研究の関連分野において多くの成果を上げている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は有限時間ビザンチン故障に対する結果は得られていないものの,関連分野における新たな課題と結果を得た.移動ビザンチン故障については,有限時間ビザンチン故障との関連性があり,本年度に得られた知見を有限時間ビザンチン故障にも適用できると期待できる.また,分散アルゴリズムの乱択化は研究計画の中でも効率のよい分散システムを設計するための重量な手段のひとつとして挙げており,今回得られた期待計算時間の保証方法をもとに,アルゴリズムの性能最適化の検討を進める. このように,本来の研究計画からはやや遅れているものの,関連する多くの問題で成果を上げており,最終年度にはこれらの新しい知見を生かした成果を期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究が主目的とする有限時間ビザンチン故障に対する故障耐性とともに,分散アルゴリズムの乱択化や移動ビザンチン故障といった関連する問題について理論研究を進める.有限時間ビザンチン故障に対する故障耐性については,現在までリーダー選挙問題についての結果を得ている.そこで,全域木作成などの他の問題やスナップショットなどの種々の解法の基本となる問題について,耐故障分散アルゴリズム,特に故障封じ込めの性質をもつ分散アルゴリズムの検討を進める予定である. 分散アルゴリズムの乱択化については,分散環境下での非同期性を,従来の決定性の環境ととらえるのではなく,ランダム性をもつ環境ととらえることで,アルゴリズムの乱択化による効果を検討している.既に,上記のような環境と分散システムで,期待計算時間が有限となるような分散システムの要件を得ているが,計算時間の最適化や,どのような乱択化が適するのかなど,さらなる検討を必要としている. 移動ビザンチン故障については,引き続き合意問題に取り組む.合意問題の難しさの根拠として,正常プロセス間での情報の伝搬,共有の難しさが挙げられる.これは,移動ビザンチン故障が正常プロセス間の通信経路に介在するためである.既存研究では,完全ネットワークなどの密な通信ネットワークでの故障数の上限が示されているが,一般のネットワークでの検討は不十分である.そこで,一般のネットワークでの故障数の上限,合意問題が可解となる必要十分条件について引き続き取り組む予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究成果のうち,移動ビザンチン故障に対する合意アルゴリズムについては国内研究会での成果発表のみであるため,国際会議への迅速な投稿,発表を行う.昨年度までの成果の論文誌投稿も並行して行う. 本年度は,耐故障分散アルゴリズムの理論研究に取り組んだため,研究計画に盛り込んだシミュレーション実験環境の整備が遅れている.次年度はシミュレーション実験環境の準備を進め,実験による理論的な結果の考察や,講演でのデモンストレーションの準備を進める.
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Research Products
(7 results)