2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23700025
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
山本 真基 関西学院大学, 理工学研究科, 専門技術員 (50432414)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | サンプリングアルゴリズム / マルコフ連鎖モンテカルロ法 / 近似数え上げ |
Research Abstract |
マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC 法)は,理論計算機科学において強力かつ重要な道具であり,多くの研究者が注目を寄せている研究領域である.本研究では,以下の2つを通じてそれらを解決することを目的とするものである:1. 新たなサンプリングアルゴリズムを提案する,2. 混合時間を算定するための新たな理論的解析手法を提案する.今年度の具体的な研究目標は,Tutte 多項式と呼ばれる関数の近似可能性・不可能性を解決することであった.Tutte 平面上で既に近似可能・不可能が証明された領域は少ししかない.少しでも多くの領域について近似可能性・不可能性を解明することが,今年度の研究計画であった.この研究計画に関連した(今年度の)研究実績は大きく3つ挙げられる:1. パス,サイクルの近似数え上げが不可能であることを示した,2. 木のランダムサンプリングが通常のマルコフ連鎖では不可能であることを示した,3. 3-SAT 問題を解く最速のアルゴリズムを提案した.このうち,最初の2つが当研究課題に直接に関係するものである.Tutte 平面に,森の数え上げ問題に相当する領域がある.(この部分の近似可能性・不可能性を示すことは研究課題の一部にもなる.)上の2つの不可能性及びその証明は,森の数え上げ問題について何らかの手がかりを与えるものであると思っている.特に,2つ目の木のランダムサンプリングがありきたりのマルコフ連鎖からは近似数え上げが不可能であることは,同じく,森のランダムサンプリングについても同様の状況である証拠を与えている.3つ目の研究成果は,直接的な関連性は少ないにしても,アルゴリズムの解析手法が当研究課題を解明するのに役立つのではないかと考えている.それは,解析した 3-SAT 問題を解くアルゴリズムが,ランダムウォークタイプのアルゴリズムであり,マルコフ連鎖の一種であるからである.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の具体的な研究目標は,Tutte 多項式と呼ばれる関数の近似可能性・不可能性を解決することであった.この研究課題に直接に関係する研究成果は次の2つである:1. パス,サイクルの近似数え上げが不可能であることを示した,2. 木のランダムサンプリングが通常のマルコフ連鎖では不可能であることを示した.Tutte 平面に,森の数え上げ問題に相当する領域がある.この部分の近似可能性・不可能性を示すことは研究課題の一部にもなる.上の2つの不可能性及びその証明は,森の数え上げ問題のについて何らかの手がかりを与えるものであると思っている.特に,2つ目の木のランダムサンプリングが,ありきたりのマルコフ連鎖からは近似数え上げが不可能であることは,同じく,森のランダムサンプリングについても同様の状況である証拠を与えている.つまり,森の数え上げが近似可能であることをランダムサンプリングから示すためには,標本点間を大きくジャンプするようなマルコフ連鎖を構成する必要があることが分かった.こうした知見は得られたものの,現在までの研究実績と当初の研究計画とを比較すると,全体的な自己評価は「少し遅れている」という印象を受ける.一つの理由として,他の研究者との交流が少なかったことが挙げられる.また,当初掲げていた目標が予想よりも少し難しい課題であったようにも感じている.
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の次年度研究課題は,半順序集合のイデアルの数え上げ問題の近似可能性・不可能性を解決するものであった.現在までの研究実績で,Tutte 多項式についていくらか成果があることから,今後の研究課題を次のように変更する.1. 木の数え上げ問題の近似可能性・不可能性を解決する.2. 森の数え上げ問題の近似可能性・不可能性を解決する.一つ目の研究課題,木の数え上げ問題の近似可能・不可能は,この分野では主要な未解決問題の一つと見なされているものである.また,次のような事実からも,それが特異であることが言える:(1)木よりも単純なグラフであるパスやサイクルが近似不可能である.(2)全域木の数え上げが厳密に多項式時間計算可能である.二つ目の研究課題は,Tutte 平面のある領域に相当するものであり,研究課題の一部にもなっている.もしこれらの解決でも難しいようであれば,入力グラフに制限を設けた問題設定を用意することを考えている.例えば,入力グラフが木である場合にはどうなるのか,そしてもし可能であれば,具体的なサンプリングアルゴリズムを提案することを目標にする.これまでの研究が少し滞っている理由に,他の研究者との交流が少なかったことが挙げられる.今後は,もっと関連分野の研究者と交流を多く持ち議論を重ね,課題の解決にあたるようにする.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度(650(千円)):書籍:(計算・アルゴリズム関連)(10×3)(成蹊大),書籍(離散数学関連)(10×2)(成蹊大),合計50(千円)旅費:国内:20(千円)×5,国外:250(千円)×2,合計600(千円)
|