2011 Fiscal Year Research-status Report
安全で容易なモジュール合成のためのプログラミング言語機構の研究
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23700033
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
青谷 知幸 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (20582919)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 文脈指向プログラミング / アスペクト指向プログラミング / プログラミング言語 / ソフトウェア進化 / ロバスト化 / 形式化 |
Research Abstract |
文脈指向言語とイベント機構の融合技術の形式的定義と,アスペクト指向言語の表現力の向上とロバスト化技術に取り組んだ.文脈指向言語は,実行環境や状態(以降文脈という)に応じて振舞を変えるプログラムを作りやすくするプログラミング言語である.プログラマは文脈毎の振舞を独立に定義し,どの振舞を実行するかを指定する.本研究ではプログラム実行中に起こるイベントに反応して実行する振舞を切り替える仕組みを持つ文脈指向言語EventCJについて,振舞を切り替えるための領域特化言語を作り,その意味をFeatherweight Javaを土台として形式的に定義した.成果を纏めた論文は文脈指向プログラミングに関する国際ワークショップCOP'11に採択され,口頭発表した.また日本ソフトウェア科学会第28回大会と,国際ワークショップAOAsia/Pacific'11で口頭発表した.アスペクト指向言語はプログラム中に散在して書かれる処理を一カ所に纏めてプログラムの管理や変更を行いやすくするプログラミング言語で,近年学術界と産業界の双方から注目を集めている.アスペクト指向言語の表現力が向上すると,より多くの散在する処理が纏められる.本研究では状態とそれに処理を一つに纏めるための機構を導入することで,アスペクト指向言語の表現力を向上させた.成果を纏めた論文はプログラムの組み合わせに関する国際ワークショップVariComp'11に採択された.プログラムをロバストにすると,プログラムの書き換えを行う際,変更を局所化できる.ソフトウェアの段階的な開発・進化が行いやすい.本研究では,近年学術界と産業界の双方から注目を集めているアスペクト指向プログラミングで開発されたプログラムをロバスト化するプログラム変換技術を開発した.成果を纏めた論文は国際ワークショップRAMSE'11に採択された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標はオブジェクト指向プログラミング(OOP)におけるクラス合成のための領域特化言語の設計と形式的定義であった.OOPで実行する振舞を選択して切り替えるための仕組みを構築する際,ステートパターンやストラテジパターンに従ってクラスを多数作成し,プログラム実行時にそれらを適切に合成する.この合成のための領域特化言語は,本研究で設計・形式化した文脈指向言語のための領域特化言語と同様のものになる.従っておおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度で設計した領域特化言語で扱おうとすると,記述が複雑になりすぎる振舞の切り替えが存在することが分かっている.この弱点は,文脈と振舞の切り替えが完全に一致しないことに起因する.今後の研究ではこの不一致を吸収するプログラミング言語の機構を設計する.この研究成果は文脈指向プログラミングに関する国際ワークショップCOP'12およびモジュラリティに関する国際会議AOSD'13に投稿する.また,複雑な言語機構を持つプログラミング言語は最適化がやりづらく,実行速度が遅い.この問題に対処するため,資源利用解析を応用したプログラム解析法を開発する.研究成果はプログラミング言語全般に関する国際会議APLAS'12に投稿する.振舞と文脈の切り替えが,プログラムの仕様と一致していることを検査する技術は,先に開発したプログラム解析法の応用である.確立した検査技術を論文に纏めて,OOPSLA'13に投稿する.最後に,プログラムの仕様からコード化までの工程を半自動化するソフトウェア開発法を確立し,これまでの技術と合わせて論文に纏め,本研究課題の集大成として論文誌に投稿する.投稿先には日本ソフトウェア科学会のコンピュータソフトウェア誌の他,プログラミング言語とその応用に関する国際論文誌TOPLASを考えている.円滑な進展のため,月に一度程度東京大学の千葉滋教授,増原英彦准教授,紙名哲生助教,そして京都大学の五十嵐淳准教授に,研究のアイデアについて意見と助言をいただく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験用および携帯用の計算機,データバックアップのための大容量ハードディスクの購入と,国際会議への旅費と参加費,論文誌の投稿料,そして研究打ち合わせの旅費に使用する.実験用計算機にはDELL社のPowerEdge R415を,携帯用の計算機には東芝DynabookのR631を考えている.当該年度で発生した未使用額131,566円の原因は,予定していた実験用計算機の見合わせである.(1)震災復興財源の確保のために交付額が3割減額変更される恐れがあったことと,(2)東日本大震災とタイの洪水を受けて半導体製品の供給が停滞したことから,次年度に見合わせた.従って繰り越した未使用額は,次年度の実験用計算機の購入のために使う.
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