2011 Fiscal Year Research-status Report
量子化学高精度理論に関する大規模並列計算アルゴリズム開発
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23700037
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石村 和也 神戸大学, システム情報学研究科, 助教 (80390681)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 量子化学 / 並列計算 / スーパーコンピュータ / 電子状態計算 |
Research Abstract |
分子の電子状態を取り扱う量子化学計算は、触媒反応解析、材料設計、創薬などに幅広く用いられている。より大きな分子をより速く、より精密に計算することが求められており、計算量、データ量は今後ますます増加すると予測される。そこで、炭素シート間やベンゼン環-水素間などの弱い相互作用を取り扱える高精度計算の中で最も計算コストが少ない2次の摂動(MP2)法について、大規模並列計算アルゴリズムの開発と実装を行い、SGI Altix ICE 8400EXスーパーコンピュータ(8CPUコア/ノード)8192CPUコアを使った計算を行った。従来、原子軌道2電子クーロン反発積分と分子軌道係数から求めていた分子軌道2電子積分を、数値求積法を用いてグリッド点の分子軌道値と1電子積分から計算することでノード間の計算負荷分散、データ分散をシンプルにした。分子軌道値及び1電子積分計算ではグリッド点を、分子軌道2電子積分計算では分子軌道をノード間で分散させることで、同じ計算を複数のノードで重複して行うことなく、また全体の通信量は使用ノード数によらずほぼ一定となった。ノード間をMPI、ノード内をOpenMPで並列化することで、より均等な負荷分散とメモリの有効利用も行った。炭化水素のテトラセン(C16H12)、コロネン(C24H12)分子の8192CPUコアでの並列加速率はそれぞれ5900倍、6266倍となった。さらに、中間データ量が合計2TBとなるフラーレン(C60)分子の計算は各ノードのメモリにデータを分散保存させることで可能になり、8192CPUコアを使い約5時間で終了した。非常に並列化効率が良く、大きな分子にも適用できる並列計算アルゴリズムであることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた2次の摂動法のMPI/OpenMPハイブリッド並列アルゴリズムの開発と実装、実証計算を行うことができた。スーパーコンピュータ256CPUコアから8192CPUコアまでの計算の結果、非常に並列化効率が良く、さらに各ノードのメモリにデータ分散をさせることで大きな分子にも適用できるアルゴリズムであることを実証した。
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Strategy for Future Research Activity |
2次の摂動(MP2)法よりも精度が高い、露わに相関したMP2(MP2-F12)法のMPI/OpenMPハイブリッド並列アルゴリズムを開発、実装し、スーパーコンピュータを使って実証する。MP2法と同様に数値求積法を用いて各ノードへの計算負荷分散及びデータ分散を行うが、MP2法に比べて多くの項があり、通信回数、通信量の増加が問題になると考えられる。そこで、データをできるだけまとめて送受信するなどの工夫を行い、大規模並列計算でも高い並列化効率を維持できるようにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
高精度並列計算で重要になる通信の最適なアルゴリズムの開発及び実装を行うため、京コンピュータと同等レベルのCPUを搭載し、さらに通信バンド幅が大きく通信遅延の短いInfinibandで接続されたワークステーション2台を購入する。
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