2012 Fiscal Year Research-status Report
GPUグリッドのための細粒度サイクル共有技術の理論構築と応用
Project/Area Number |
23700057
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊野 文彦 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (90346172)
|
Keywords | 高性能計算 / GPGPU / マルチタスク / グリッド計算 |
Research Abstract |
本研究の目的は, GPU(Graphics Processing Unit)向けマルチタスク機構をもとに,グリッド環境において細粒度サイクル共有を実現するための(A)細粒度スケジューリングや(B)遊休サイクルモデルなどの未だ解明されていない基礎的な問題を解決することである.さらに,(C)バイオ情報学などにおける応用へ展開するための研究基盤を確立し,電子文書を編集しながらも科学計算を高速化できることを示すことを目指している. 平成24年度は,昨年度に開発した(A)細粒度スケジューリング機構を改良し,その機構を用いて(C)バイオ情報分野における応用の1つである相同性検索に適用し,改良の効果を評価した.また,準マルコフ過程に着目し,(B)遊休サイクルのモデル化を試みた.改良した機構は,GPUにおけるより短い遊休時間を活用できる.従来の秒単位に加えてミリ秒単位の遊休時間を活用するために,画面の描画レートを極度に低下させない範囲で応用を常時実行する.ただし,2つの実行モードを用意し,これらをGPUの負荷状況に応じて使い分ける.これにより昨年度までと比較して,画面の描画レートを低下させることなくおよそ2倍の計算スループットを達成できた.一方,遊休サイクルのモデル化に関しては,4名の大学院生を対象に3ヶ月に渡る実行履歴を取得し,準マルコフ過程により遊休時間の長さを予測した.検定の結果,従来のモデル化と比べて有意水準1%で提案のモデル化が優れていることが分かった. 以上の成果のうち,相同性検索を用いた評価に関してはIEEE Transactions on Parallel and Distributed Systems誌や国際会議GTCにて発表した.また,細粒度スケジューリング機構については国内の研究会にて発表した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,平成24年度の研究細目として(1)遊休サイクルモデルの確立および(2)実応用による実証実験を挙げている.(1)については,昨年度までに開発した実行履歴の収集システムを使い,3ヶ月に渡り4名の実行履歴を収集した.当初の目標「半年以上に渡る20名以上の履歴収集」に向けて,モニタリング対象者を増やし実行履歴を収集しつつある.また,この実行履歴を用いて遊休サイクルモデルのたたき台を構築し,統計的な優位性を確認した.今後はそのモデルを改良し,予測精度を向上させる予定である.(2)については,大阪大学大学院情報科学研究科において実証実験を実施し,細粒度で遊休サイクルを共有することの効果を実際の応用を用いて評価できている.このように,目標の大半を達成できており,計画は順調に進展している.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は本課題の最終年度である.以降も当初の計画にしたがい,(B)遊休サイクルモデルの確立と(C)実応用による実証実験に取り組み,(A)~(C)に関してシステムの統合を図る.また,より複雑な広域環境上に設計を発展させ研究の発展を図るために,システムスケーラビリティの観点から資源管理サーバの性能向上を図る.さらに,2012年11月に発表された新しいGPU(Kepler 20cアーキテクチャ)における評価に取り組む.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の見込み額と執行額が少し異なったが,研究計画に変更はない.最終年度は,前年度の研究費を含め,主に研究成果発表のための研究費を計上している.平成24年度中に発表できなかった(B)遊休サイクルのモデル化,および(A)改良した細粒度スケジューリング機構について,研究会ならびに論文誌における発表を計画している.
|