2011 Fiscal Year Research-status Report
様々な公開鍵暗号方式を高速に実行できるプロセッサの研究
Project/Area Number |
23700063
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
谷川 一哉 広島市立大学, 情報科学研究科, 助教 (80382373)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 再構成型プロセッサ / ビットシリアル演算 / 公開鍵暗号 / 多倍長整数演算 |
Research Abstract |
公開鍵暗号の多くは四則演算を行うだけで暗号化・復号化が可能であるが,演算で使用されるデータ幅が長く,多倍長整数演算を何度も繰り返し行う必要がある.そのため,A)桁上げ・桁下げによって生じるキャリーの伝搬遅延,B) 多倍長整数演算を取り扱う際に生じる大量のデータ転送,という問題によって処理量が増加する.また,膨大な処理量を高速化するために専用ハードウェアを作成すると,現暗号が解読された際に別の暗号に変更することができないという問題がある.そこで本研究では,1) キャリーの伝搬の改善,2) 多倍長整数演算で生じるデータ転送量の低減,3) 様々な公開鍵暗号に対応可能,という要求を満たすプロセッサを開発した. まず,キャリーの伝搬遅延を少なくするための演算器(FU)の検討を行い,キャリーをFU内部に保持して演算する構成とした.次に,要求事項2)を満たすためにFUはビットシリアル演算方式を採用した.さらに,FUへのデータ投入機構も多倍長整数演算を実行する際に効率よくデータを投入できる構成の設計を行った.また,要求事項3) を満たすためにFU間を自由に配線できる柔軟性が必要になる.そこで,再構成型アーキテクチャとしてDS-HIEアーキテクチャを採用した.DS-HIEアーキテクチャは小面積で高い配線性を持った配線構造を備えている.そして,今回検討したFU,データ供給機構を搭載した再構成型プロセッサDS-REMIEを開発した. DS-REMIEプロセッサの有効性を示すために,DS-REMIEプロセッサとIntel Xeon CPUX3350との実行時間の比較を行った.DS-REMIEプロセッサの実行時間はXeonと比べ,2048ビットのモンゴメリ乗算では73%,160ビットの楕円曲線上の加法では5%,160ビットの楕円曲線上の2倍算では8%まで削減できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度に開発したDS-REMIEプロセッサはIntel Xeon プロセッサと比較して,RSA暗号で使用されるモンゴメリ乗算の計算を3.7倍高速化できている.Xeonプロセッサは45nmプロセスで設計されているのに対し,我々が開発したDS-REMIEプロセッサは180nmプロセスで設計されており,プロセスの世代としては4世代の違いがある.それにも関わらず,3.7倍の高速化が出来ていることから,同世代のプロセスで設計すればさらに数倍以上の性能差になることは明白である.この点から,従来のサーバ用プロセッサより10倍以上の性能差は達成できていると言える.また,今回の評価では楕円曲線暗号で使用される楕円曲線上の加法,2倍算もXeonプロセッサと我々が開発したプロセッサは同程度の性能(1.05~1.08倍)を達成しており,プロセスの違いを考慮すれば十分高い性能を達成していると言える.以上より,順調に研究が進んでいると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度ではプロセッサを開発し,チップ試作を行った.次年度では試作したチップを動作確認し,その優位性をデモするためのデモボードを開発する.本デモボードを開発する事で,開発したプロセッサがシミュレーションのみでなく実際に試作可能であることを示せるため,我々が開発した技術を企業が利用しやすくなると考えられる.また,デモボードを使用する事で,今回開発したプロセッサの有効性を様々な場所でデモする事ができ,様々な人に対して研究の成果を知らせる事ができると考えられる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究の推進方策で述べたようにデモボードを設計するための設計予算を申請している.また研究成果を発表するための旅費と論文誌の別刷代を申請している.
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