2012 Fiscal Year Research-status Report
プログラムの大域的構造を利用したメニーコア・シミュレーションの高速化に関する研究
Project/Area Number |
23700064
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
木村 啓二 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50318771)
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Keywords | コンピュータアーキテクチャ / マルチコア / メニーコア / アーキテクチャシミュレータ / 並列化アプリケーション |
Research Abstract |
本研究の目的は、メニーコアプロセッサのソフトウェアシミュレーションに要する膨大な時間を大幅に削減することである。この目的のために、並列化前のプログラムの実機での実行情報とループなどのプログラムの大域情報を利用し、プログラムの実行状況が均質な区間を必要最小限の分量だけ高精度のシミュレーションを行うことにより、シミュレーションの精度を保ったままシミュレーションの時間を短縮する。また、高精度のシミュレーションを行う区間をコンパイラの解析情報を利用して自動抽出し、シミュレーション環境の利便性を高めることも本研究の目標とする。 平成24年度は当初計画に沿って、並列コンパイラとアーキテクチャシミュレータを連係させるインタフェースの開発、並びに平成23年度までの研究で実施した実プログラムによる実験を通して開発した手法の拡張を行った。 より具体的には、並列化コンパイラが並列化したプログラムの中に埋め込み、シミュレータに高速実行部分及び詳細シミュレーション部分を切り替える指示を行うインタフェースを定義し、そしてその指示に従ってシミュレーション精度を実行時に低オーバーヘッドで変化させるアーキテクチャシミュレータを開発した。 さらに、手法の拡張に関しては、同一ループであってもプログラムの入力や実行状況に応じてその挙動が大幅に変わるようなプログラムに対して、その挙動をx-measn方を用いて似通った性質を持つクラスタに分割することにより、各クラスタに対してサンプリング数を決定することにより全体のシミュレーション時間を短縮するための基礎技術を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では研究期間内で以下の項目を明らかにすることを目標としていた:(1) シミュレータ上で実行する並列化された対象プログラムの、高精度シミュレーションが必要なコード部分とそのシミュレーション分量の決定手法。実機による並列化前プログラムの事前実行情報の利用方法も合わせて明らかにする。(2) 高精度シミュレーションにより測定したシミュレーションサイクル数からプログラム全体のシミュレーションサイクル数を推定するためのモデル。並列処理オーバーヘッドをどのように考慮するかが重要なポイントとなる。(3) 並列化コンパイラとの連係により、高精度シミュレーションを行うコード部分とその分量を自動抽出するメニーコアシミュレータの構築。(4)シミュレーション対象プログラムを全て精密に実行した場合に対する速度向上率及び精度。 これらの目標のうち平成24年度では、並列化コンパイラと連係動作するメニーコアシミュレータの開発すること、並びにシミュレーション高速化手法の拡張を行うこととなっていた。 研究実績の概要で記した通り、本年度では並列化コンパイラとメニーコアアーキテクチャシミュレータを連係させるインタフェースの定義、及びそのインタフェースに従い動作モードを低オーバーヘッドで動的に変化させるシミュレータの開発を行った。 さらに、並列実行時の挙動が大きく変化するプログラムに対しても、挙動が似通った動作状況の塊(クラスタ)に自動的に分割してサンプリング数を決定するという手法拡張の検討と予備評価を行った。 以上より、当初の計画通りに研究が進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初研究計画通りに研究を進める。すなわち、これまでに開発した高速化手法、及び並列化コンパイラと連係するメニーコアアーキテクチャシミュレータの有用性を確認するため、性質の異なる多くのアプリケーションプログラムを通して実験を行う。実験結果によってコンパイラ・シミュレータ間のインタフェースに修正あるいは追加部分が必要であることが判明した場合は、適宜その拡張を行う。また、詳細シミュレーションを行う部分及びそのシミュレーション分量、並びに詳細シミュレーション部分から全プログラム実行コスト推定モデルに関しても、これら多くの評価を通して必要に応じて拡張を行う。 得られた成果は国内外に積極的に発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、当初予定していたよりも実験に必要な機材が安価に調達でき、また出張旅費も少なかったため、次年度使用額が73,223円生じたが、次年度は当初申請額に合わせて本繰越額を、特に学生の研究成果発表に有効に利用する予定である。より具体的には、実験によって得られた成果を国内外の学会における学生による発表という形で積極的に公開する。また、必要に応じて機材の拡充も行う。
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