2011 Fiscal Year Research-status Report
OFDM協力中継通信を用いたマルチホップネットワークシステムの研究開発
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23700075
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
内藤 克浩 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80378314)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | OFDM / 協力中継 / マルチホップ |
Research Abstract |
本年度はOFDM協力中継通信システムのネットワークシミュレータへの実装をはじめる前に、提案方式の物理的な通信特性についてMatlabを用いて検証を実施した。本検証では、Matlab上でOFDMの送受信機モデルを構築することにより、無線信号を模擬したOFDM信号波形を実際に計算し、受信機で実際に受信するOFDM信号波形に基づいた変復調処理を実現した。本検証結果は、実質上OFDM送受信機を制作したのと同等の評価をおこなっており、提案方式は特に多数のマルチパスが存在するレイリーフェージング環境などで大きな特性改善効果があり、複数の端末が協力中継して同一OFDM信号を送信し、受信機がガードインターバル内の到来時間差でこれらのOFDM信号を受信できた場合、最大比合成とほぼ同等の受信性能の改善が見込まれることを確認できた。 また、提案方式のネットワークレベルの特性を明らかにする上で、ネットワークシミュレータであるQualNetの開発に深く関与しているカリフォルニア大学ロサンゼルス校に出張することにより、QualNetを利用した車々間ネットワークの検証方法などの具体的な事例について学び、提案方式のQualNet上への基礎実装をすでに完了させた。これらの評価は、情報処理学会のMBL研究会で5月に報告予定であり、その後国際会議、論文誌などでの公開を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・OFDM協力中継通信方式の基礎的な特性解析 本検討では、数値演算ソフトウェアであるMatlabを利用することにより、提案方式のOFDM送受信機モデルを作成した。そして、複数の送信機が送信する同一OFDM信号を生成し、その合成波を受信機で受信した場合のビット誤り率の評価を行った。結果より、提案方式は特に多数の反射波が存在するレイリーフェージング環境において高い特性改善が見受けられ、その特性改善は最大比合成を行うのと同等との結果を得た。・OFDM協力中継通信方式用のアクセス制御手法の開発 本検討では、複数の送信端末が自律的に送信タイミングを同期可能なアクセス制御方式の開発を行った。具体的には、マルチホップネットワークで利用される通信デバイスで頻繁に採用されるCSMAと呼ばれるアクセス制御メカニズムを拡張することにより、同一の送信元端末、同一のホップ数、同一のパケットシーケンス番号の時には、同一のタイミングで送信処理を開始する方式を提案した。また、本方式をネットワークシミュレータであるQualNet上に実装した。また、シミュレーション結果から提案方式を利用することで、短時間でパケット中継が可能であることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
・OFDM協力中継通信方式を用いるブロードキャスト配送技術の開発 提案方式は同一のデータを再転送するブロードキャスト通信で特に有効であることが想像される。ブロードキャスト通信は経路制御などでも必要不可欠な通信であるが、無線資源の浪費が大きい上、信号衝突の影響も受けやすい。OFDM協力中継通信方式では、同一OFDM信号がGI長内に到着する場合、信号衝突の影響を受けなくなり、大きな特性改善が見込まれる。また、提案方式をブロードキャスト通信で用いることにより、ブロードキャスト通信を利用する多くのプロトコルの特性も改善することができると考えている・ OFDM協力中継通信方式を用いるマルチキャスト配送技術の開発 マルチキャスト配送では、配送木上流のパケット損失の影響を下流端末全てが受けるため、特にパケット衝突の影響を緩和することは有効である。OFDM協力中継通信方式を想定したプロトコルでは、ホップ毎に送信時間を適切に制御することにより、パケット衝突の影響をほぼ回避可能な配送手段を提案可能と考える。結果としてCSMAが有効に働かない隠れ端末が存在する状況などにおいても、パケット衝突による特性劣化の影響を大幅に改善できると考えており、マルチキャスト通信の信頼性及び安定性向上の観点で大きな意義があるものと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究では以下の研究費の使用を計画している。・開発用・発表用コンピュータ:提案方式の研究を行う上でのシミュレーション開発環境用及び学会での発表用に利用するコンピュータをとして購入する。・ソフトウェア無線機器:提案方式の実証実験用として、ソフトウェア無線機器を購入する。・出張旅費:国内会議及び国際会議への出張旅費を計上する。なお、立替払いの取り扱いが困難な物品があったため、次年度に予算を計上する。
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