2011 Fiscal Year Research-status Report
無線センサネットワークにおけるモバイル端末を用いたデータ収集に関する研究
Project/Area Number |
23700078
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
神崎 映光 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (80403038)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 無線センサネットワーク / モバイルシンク / 移動体通信 |
Research Abstract |
無線センサネットワークにおいて、人や車両等がもつモバイル端末をデータ収集用端末(モバイルシンク)として利用する場合、これらモバイルシンクのもつ移動特性を考慮したデータ転送機構が必要となる。本研究では、モバイルシンクを導入した無線センサネットワークにおいて、センサデータの収集を高信頼・低遅延で実現することを目的とし、下記の課題それぞれについて研究を推進した。【1. モバイルシンクとの接続状況に基づくデータ転送】本年度は、自由に移動するモバイルシンクのいずれかにデータを転送するための通信制御手法について研究を推進した。モバイルシンクのいずれかにデータを転送するためには、多くのモバイルシンクと安定して通信可能なセンサノードに向けてデータを転送することが有効である。そこで、モバイルシンクが定期的に発信する信号(ビーコン)を受信した頻度に基づいて、モバイルシンクとの接続状況を規定し、これをノード間で共有することで、データ発生源のノードからモバイルシンクまでの高信頼なデータ転送を実現する手法を提案した。【2. センサデータの特性を利用したデータ転送の効率化】本年度は、センサノードが取得するデータがもつ空間的・時間的な相関性に基づき、データ収集に要する通信量を削減する手法について研究を推進した。具体的には、各センサノードにおいて、過去に自身が観測したセンサデータや近隣のセンサノードが観測したセンサデータを参照し、これらを用いて現在の観測値が推測可能である場合、観測値の発信を停止する手法を提案した。さらに、センサデータの特性のみならず、無線通信の特性を考慮したデータ収集の効率化手法も提案した。上記の手法それぞれに対し、実験による性能評価を実施し、従来研究と比較して、高信頼・低遅延・低負荷なデータ収集が実現できることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、これまでに積極的に研究を推進した結果、当初の計画を上回る進展が見られた。以下、研究実績の概要にて述べた各研究課題について、これまでの達成度を説明する。【1.モバイルシンクとの接続状況に基づくデータ転送】当初の目標は、環境内を自由に移動するモバイルシンク群のうち一つ以上にデータを転送することを目的とし、多くのモバイルシンクと安定して接続可能なセンサノードにデータを転送する手法の設計および評価を行うことであった。また、そのための方法として、(1)モバイルシンクとの接続状況をセンサノード間で低負荷で共有する方法、(2)共有情報を利用した高信頼・低遅延なデータ転送方法をそれぞれ考案することを目指していた。平成23年度は、これらについて基礎的な手法の設計・評価を行ったが、(1)についてはデータ転送効率やネットワーク内負荷を考慮した複数の方法を考案し、データ転送率や遅延のみならず、環境の変動に対するロバスト性などを多面的に評価した。その成果については対外発表まで完了している。このことから、本課題については、当初の目標を上回る進展があったといえる。【2.センサデータの特性を利用したデータ転送の効率化】当初の目標では、平成24年度以降に取り組むこととしていたが、本課題についても手法の設計および実験による有用性の検証が完了しており、国際論文誌International Journal of Advanced Computer Scienceへの掲載決定を含め、国内外での対外発表を行なった。このことからも、当初の目標を超える進展があったといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
以下、各研究課題について、今後の研究の推進方策を説明する。【1.モバイルシンクとの接続状況に基づくデータ転送】平成23年度は、モバイルシンクが定期的に発信する信号(ビーコン)の有無のみを用いた基礎的な手法を考案した。ここで、モバイルシンクとなる端末は、車車間通信やアドホックネットワークなど、モバイルシンク間での相互通信も行うものと考えられる。この場合、モバイルシンクから定期的に発信されるビーコンには、モバイルシンクの位置や移動速度等の情報が付加される。今後は、ビーコンに付加されるこれらの情報を積極的に活用し、センサデータの転送効率をさらに向上させる方法を考案する。例えば、モバイルシンクの移動速度が小さくなる領域では、センサノードと通信可能となる時間が長くなる可能性が高いため、この領域に向けてデータを転送することで、より高信頼なデータ転送が実現できるものと考えられる。また、平成23年度に行った動作検証および性能評価では、モバイルシンクの移動特性として、簡素化したモデルを用いるにとどまっている。ここで、提案手法のより詳細な動作検証および性能評価を行うためには、より実環境に即した環境を再現する必要がある。今後は、実車両の移動履歴等のデータを用いることで、より実環境に即した環境における実験を行う。【2.センサデータの特性を利用したデータ転送の効率化】センサデータが示す相関性を考慮したデータ収集手法については、無線通信の特性を単純化した環境での性能評価を行うにとどまっている。今後は、実環境下での実環境における通信の挙動を再現するシミュレータを用いた実験を行い、提案手法の特性をより詳細に検証する。また、無線通信の特性を考慮した手法についても、現状では限定された環境下での性能評価を行うにとどまっているため、今後は多様な環境での動作検証を行い、その有効性を確認する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以下、研究費の各用途について、今後の使用計画を説明する。【物品費】各研究課題において、より詳細な動作検証および性能評価を行うためには、実験を行うためのシミュレータが必要になる。また、モバイルシンクの移動特性や電波伝播特性など、実環境に即した環境を再現した実験を行うためには、平成23年度に調達した計算機に加え、高速な演算が可能なコンピュータが必要になる。さらに、実環境上での動作検証を行うためには、センサノードやモバイルシンクとなる端末の実機が必要となる。成果発表の際には、論文別刷代金が必要となる。【旅費】平成23年度に引き続き、資料収集や関連研究者との打合せのために、国内外への旅費が必要である。また、各年度あたり、国内会議に2件ないし3件、国際会議に1件ないし2件程度の成果発表を行うための旅費も必要である。【その他】国内外の会議において調査や成果発表を行うため、これらの会議への参加費が必要となる。また、各年度1件ないし2件程度、論文誌による成果発表を行うため、論文掲載料金が必要になる。
|
Research Products
(4 results)