2011 Fiscal Year Research-status Report
端末の多様性に対して堅牢かつ低コストな無線LAN位置推定法
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23700080
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
内山 彰 大阪大学, 情報科学研究科, 特任助教・常勤 (70555234)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 位置推定 / アルゴリズム / ユビキタス / 無線ネットワーク |
Research Abstract |
近年,ノートパソコンやスマートフォンの普及により無線LANを利用可能な携帯端末は爆発的に普及しており,これら携帯端末の現在位置を低コストかつ高精度に推定することで,ユーザの利便性向上のみならず,人の分布を考慮したエネルギー削減方式の考案や都市計画,災害時避難計画などへの応用が期待されている.本研究では無線LANを利用した位置推定法において,導入・維持コストが不要で端末の多様性による精度低下を抑える手法の考案を目標としている. このため,まず初年度は端末による差異が生じにくいレンジフリー手法を用いて,モバイル端末の移動軌跡を推定する手法を提案した.提案手法では各端末に対して最大電波到達距離のみを仮定して,互いに通信できた端末間の距離は最大電波到達距離以下であるという制約を利用して,端末の各時刻における推定位置を絞り込んでいる.一般に無線LANを利用した位置推定法では基地局からの電波強度に基づき端末の位置推定が行われるが,提案手法では最大電波到達距離を用いて緩やかな制約として利用する.従って電波強度を用いた手法と比べて提案手法の精度は劣るが,端末の多様性に対する堅牢性は向上する.緩やかな制約を用いることによる精度低下の影響を抑えるため,互いに通信していない端末間の距離は最大電波到達距離よりも大きいという制約,ならびに最大移動速度を仮定し,一定時間内に移動可能な範囲に対する制約を利用することで精度の向上を図っている. シミュレーションによる性能評価では平均位置誤差は最大電波到達距離の40%程度であり,実証実験でも2mから3m程度の位置誤差が達成できることを確認している.提案手法の成果はユビキタスコンピューティングの分野では難関の国際学術論文誌として認識されているPervasive and Mobile Computingに掲載されており,国際的な学術インパクトは大きい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標は無線LANを利用した位置推定法において端末によっては位置推定精度が低下するという問題を解決することである.同時に導入・維持コストが不要な方式の考案を目指すことによって,位置推定方式の普及を容易にすることも目標とする.このため,本年度は端末の接続関係から導出される緩やかな制約を用いたアルゴリズムを考案し,シミュレーションでの評価により最大電波到達距離の40%から60%程度の位置誤差が達成できることを確認している.提案方式は既存の無線LAN基地局をそのまま利用可能であり,それぞれの基地局の位置を登録するだけで良いため,導入・維持コストはほとんどかからない.提案方式の成果はユビキタスコンピューティングの分野では難関の国際学術論文誌として認識されているPervasive and Mobile Computingに掲載されており,研究成果を国際的に広く公表している.一方で,提案方式は端末間の接続関係を利用するため,位置推定精度は周辺の端末数に依存する.したがって,人の密度が高い地下街などにおいては高精度な位置推定が可能であるが,密度が低い場合には精度が低下する.オフィスなどでは人の密度が低い状況も十分考えられるため,そのような状況でも端末の多様性に依存せず高精度な位置推定方式を提供することが望ましい.しかしながら現状では有効な方法の考案までには至っていない. 以上のように,一定以上の端末密度が期待できる環境に対しては研究目標をおおむね達成できているが,端末密度が低い環境において解決すべき課題は残されている.このような研究の進捗状況をふまえ,研究目標に対しておおむね順調に進展していると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に考案した方式では,端末間の接続関係を利用するため周辺に存在する端末数が少ない場合に精度が低いという問題がある.このため,今後は端末間の接続関係以外の情報も利用して,端末密度が低い場合でも精度の低下をできる限り防ぐ方式を考案することが必要である.例えば地図情報を利用したり,過去の推定位置を利用して移動方向を予測するなどの工夫が考えられる.また,無線LAN基地局からの電波強度と周辺端末との接続関係を併用することで,端末密度の変化に対する安定性を向上できる可能性もある.加えて,複数の無線LAN基地局を配置したテストベッドにおいて様々な端末により電波強度を測定し,端末の多様性による影響を更に調査・分析することも重要となる. 特に無線LAN基地局からの電波強度と周辺端末との接続関係を併用する方式の考案においては,端末の多様性に強い電波強度差などを利用した推定アルゴリズムを検討する.その際,ノートパソコンやスマートフォンなど10種類程度の異なるデバイスを用意し推定アルゴリズムの性能を評価する.アルゴリズムの設計にあたっては,これまでに実施してきた位置推定法で考案した位置推定アルゴリズム設計の応用も検討しながら進める.アルゴリズム設計の妥当性など,本研究を進めるにあたり多角的な視点を取り入れるため,これまで共同で研究を実施してきた研究者らを含め,多方面からの意見を得ながら研究を推進する. ワークショップなどを通して国内外の専門家から意見を得ながら,アルゴリズム設計の妥当性などを確認し,適宜方針の修正を行う.設計した位置推定手法ならびに実機実験に基づく性能評価結果を研究成果として広く発信するため,著名な国際会議への投稿を目標とする.今後は以上のような方向性を視野に入れつつ,利用可能な情報をできる限り利用して,様々な環境で利用可能な位置推定方式の実現を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
端末の違いによる影響を分析するため,無線通信機能を搭載したノートPCやスマートフォンなどの端末を複数種類用意し,観測専用の端末として各所に設置することで複数地点からの電波強度データを収集して分析を実施する必要がある.このため複数種類の無線搭載機器を購入するための備品・消耗品費ならびにデータ収集のための携帯電話網によるデータ通信回線が必要である.これらの大半は上半期の購入を予定している.また,無線ネットワークにおいて第一線で積極的に活動している研究者らとの意見交換や交流を図るための国内研究会参加旅費,および研究成果を広く公表するための論文誌掲載料を申請する.
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Research Products
(6 results)