2012 Fiscal Year Research-status Report
端末の多様性に対して堅牢かつ低コストな無線LAN位置推定法
Project/Area Number |
23700080
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
内山 彰 大阪大学, 情報科学研究科, 特任助教(常勤) (70555234)
|
Keywords | アルゴリズム / 無線ネットワーク / ユビキタス |
Research Abstract |
スマートフォンを始め無線LANを利用可能な携帯端末は爆発的に普及しており,これら携帯端末の現在位置を低コストかつ高精度に推定することで,ユーザの利便性向上のみならず,人の分布を考慮したエネルギー削減方式の考案や都市計画,災害時避難計画などへの応用が期待されている.本研究では無線LANを利用した位置推定法において,導入・維持コストが不要で端末の多様性による精度低下を抑える手法の考案を目標としている. 初年度では端末による差異が生じにくいレンジフリー手法を用いて,モバイル端末の移動軌跡を推定する手法を提案した.2年目となる本年度は要求推定精度を明らかにするため,応用事例に着目して研究を推進した.このため,位置推定方式による精度の違いを明らかにする目的で,拡張現実感アプリケーションを対象に,人間にとっての対象把握の容易さを定量化する指標を考案した.主観的評価に基づく実験を行った結果,端末同士の接続関係を用いる協調型の位置推定方式により得られた推定結果は,非協調型の位置推定方式と比較して対象把握が容易であることが分かった.また,推定結果をサーバに収集することにより,リアルタイムに端末の分布状況を把握し,混雑している領域を特定する方法を考案した.提案手法では,初年度に考案した無線LAN位置推定法とスマートフォンに搭載されている加速度センサの情報を併用し,混雑回避行動を検出することで混雑領域を推定する.大阪駅プラットフォームを対象にシミュレーション評価を行った結果,ユーザ存在率20%の場合は,約24秒の遅延,81%の正解率でプラットフォームにおける待ち行列の混雑状況を推定できることを確認した. 本年度の成果は英語論文誌Springer Wireless Networksなどの国際論文誌に掲載されており,国際会議発表を含む3件の学会発表を行うなど,広く成果を発信している.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標は無線LANを利用した位置推定法において端末によっては位置推定精度が低下するという問題を解決することである.同時に導入・維持コストが不要な方式の考案を目指すことによって,位置推定方式の普及を容易にすることも目標とする.初年度では,端末の接続関係を利用した位置推定アルゴリズムを考案しており,提案した位置推定方式は既存の無線LAN基地局をそのまま利用可能であるため,導入・維持コストがかからないという目標を達成できている.位置推定精度については最大電波到達距離の40%から60%であることがシミュレーション評価により確認されているが,これらの位置推定精度がアプリケーションでの利用に十分かどうかは定かで無い.このため,本年度では応用事例に着目した研究を行っており,端末間の接続関係を利用する協調型の位置推定方式が拡張現実感アプリケーションでの利用に有効であることや,端末の位置推定結果を集約することで実現される混雑推定アプリケーションでは数m程度の位置誤差での推定精度が要求されることが明らかになった.これに対して考案した位置推定精度は最大電波到達距離を10mに設定すれば,数mの位置推定誤差を達成できるため十分といえるが,端末密度によっては無線ネットワークが頻繁に分断され,精度が悪化する場合も存在する.このため,無線ネットワークが頻繁に分断される環境においても位置推定精度の悪化を抑える工夫が必要となる. 以上のように,安定した無線ネットワーク接続が可能な環境においては研究目標をおおむね達成できているが,端末密度が低い場合や端末の移動が頻繁な場合など,ネットワークが頻繁に分断される環境において解決すべき課題が残されている.このような進捗状況をふまえ,研究目標に対しておおむね順調に進展していると評価する.
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度ならびに本年度で得られた研究成果により,導入・維持コストが不要かつ端末の多様性による精度低下を抑える手法の考案,ならびにアプリケーション・環境によっては考案した位置推定方式により十分な精度が得られることが明らかになった.その一方で,端末密度が低い場合や端末の移動が頻繁に発生する環境では,ネットワークが頻繁に分断されてしまうため,位置推定精度が悪化するという問題が存在することも分かった.このため,最終年度となる平成25年度では,地図情報や過去の推定位置など,追加情報を併用することでこれらの課題解決を目指す.アルゴリズム設計の妥当性など,本研究を進めるにあたり多角的な視点を取り入れるため,これまで共同で研究を実施してきた研究者らを含め,多方面からの意見を得ながら研究を推進する. 加えて,ワークショップなどを通して国内外の専門家から意見を得ながら,アルゴリズム設計の妥当性などを確認し,適宜方針の修正を行う.設計した位置推定手法ならびに実機実験に基づく性能評価結果を研究成果として広く発信するため,著名な国際論文誌への採録を目指す.今後は以上のような方向性を視野に入れつつ,利用可能な情報をできる限り利用して,様々な環境で利用可能な位置推定方式の実現を目標に研究を推進する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き端末の違いによる影響を分析するため,無線通信機能を搭載したノートPCやスマートフォンなどの端末を複数種類用意し,観測専用の端末として各所に設置することで複数地点からの電波強度データを収集して分析を実施する.このため複数種類の無線搭載機器を購入するための備品・消耗品費ならびにデータ収集のための携帯電話網によるデータ通信回線が必要である.また,無線ネットワークにおいて第一線で積極的に活動している研究者らとの意見交換や交流を図るための国内研究会参加旅費,および研究成果を広く公表するための論文誌掲載料を申請する.
|
Research Products
(5 results)