2011 Fiscal Year Research-status Report
遅延耐性ネットワークにおける異種端末の共生を可能にする経路制御方式に関する研究
Project/Area Number |
23700081
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小泉 佑揮 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (50552072)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 遅延耐性ネットワーク / 経路制御 / 自己組織制御 / 適応的制御 |
Research Abstract |
本研究課題では、特性の異なる多種多様な端末を柔軟に収容する遅延耐性ネットワーク実現を目的とし、生物の環境変化に対する適応性を応用したノードの特性に依存しない遅延耐性ネットワークにおける経路制御の実現を目指す。平成23年度は、特性が異なるノードが混在した状況下で発生する課題の整理、および既存研究で示されている生物の適応的な振る舞いの中から遅延耐性ネットワークにおける経路制御に適した振る舞いを選定することに注力した。遅延耐性ネットワークにおける既存経路制御の再現シミュレーション評価を通して、考え得るノード特性の中で移動速度と移動のパターンが経路制御の性能に比較的大きな影響を与えることがわかった。ここで得られた知見をもとに、生物の細胞が取得可能な栄養素の変化に適応して内的構造を適応的に変化させるメカニズムを応用した経路制御の初期検討を実施した。検討した方式は、細胞の振る舞いをノードなどの制御エンティティ自体に適用するのではなく、制御されるメッセージ自身が生物システムの振る舞いを模倣する。メッセージ自身が次の転送先ノードを自律的に決定するというアナロジーにより、生物システムの適応的な振る舞いを、遅延耐性ネットワークにおける経路制御に適用できる見込みが得られた。シミュレーションにより初期評価により、移動特性が混在した環境下では、既存の発見的方法にもとづいた経路制御よりも低遅延でメッセージの転送を実現できることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記した平成23年度計画通り、生物の適応的な振る舞いの選定と、その生物の振る舞いを遅延耐性ネットワークに読み替える点の実施を完了した。また、24年度の研究に向けて、課題の整理も完了している。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画通り、平成24年度は、生物の局所的な相互作用による共生行動を応用した経路制御に必要な情報取得方法の確立に取り組む。昨年度は、生物システムの適応的な振る舞いを遅延耐性ネットワークにおける経路制御に応用することに集中するために、ネットワークの状態はある程度自由に取得できるものと仮定したが、これは遅延耐性ネットワークでは実現が困難な仮定である。平成24年度は、この仮定を取り除くために、生物が局所的な相互作用にもとづいて共生行動をとる点を応用し、経路制御に必要な情報を取得する方法を実現する。ここでは、相互作用の及ぼし方(課題1)と、その相互作用を及ぼす範囲(課題2)を適切に決定する必要がある。平成23年度の研究で得られた知見に加え、研究活動スタート支援の補助のもとで実施したポテンシャル経路制御の知見を活用できる見込みがある。課題2に関しては、以下の方針で研究を進行する。一般的には、相互作用を及ぼす範囲を広くすると、得られる情報が多くなるため、ネットワークに関する正確な情報を得ることができる。しかし、遅延耐性ネットワークでは時々刻々とネットワークの状態が変化していることを考えると、この前提は成り立たない。相互作用を与える範囲が広くなると、情報の収集に要する時間が長くなる。この間にネットワークの状況が変化するため、収集した情報は既に正確なものではない。そのため、情報の正確性と得られる情報量のトレードオフを考慮した上で適切な相互作用を及ぼす範囲を決定する必要がある。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、可視化による分析調査とデモンストレーションを計画している。そのために計算能力とグラフィック性能の高いノートパソコンが必要であるので、これを費用計上している。また、局所的な相互作用を評価するために、ある程度の大規模ネットワークでの評価が必要であるため、さらなる大規模ネットワークの評価のために、前年度導入した計算機の増強のための消耗品費を多く計上している。最後に、国内学会に加え国際会議での発表を予定しており、そのための費用を計上している。
|
Research Products
(1 results)