2011 Fiscal Year Research-status Report
既存インフラと車車間通信を組み合わせた車載機器向け情報通信プラットフォームの構築
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23700082
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
梅津 高朗 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (10346174)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 車車間通信 / モバイルアドホックネットワーク / 高度交通システム / 通信プロトコル / 無線システム |
Research Abstract |
本提案では安全で快適な交通環境の実現を目的とした車載機器向け情報通信プラットフォームに適した通信方式の設計を目的として研究を行う。現在、車載機器用の情報ネットワークは、用途ごとに様々な方式が開発され、光ビーコンやDSRCといった一部の方式は既に実用化されている。これらの通信方式を用途ごとに使い分けるだけではなく、例えばある通信デバイスの下位層のプロトコルの制御に、他の通信デバイス経由で得た情報を利用するなど、積極的に互いに補完し合うことでより効率的なネットワーク環境を実現できると考えられる。組み合わせて利用することを前提とする新たな通信プロトコルなどを検討し、シミュレーションによりその性能を評価する。本年度は、いくつかの現実的な無線通信デバイスをモデル化してそれらを組み合わせた場合の具体的な利用方法を検討する一方、他の無線デバイスが利用な場合への対応も考慮に入れる。また、やりとりされるデータに関してもモデル化を行い、重要度や即時性、集約や省略の可能性に関してクラス分けできるようにする。既存の車車間アドホックネットワークや、センサーネットワークプロトコルなどに関して調査を行い、基本的なプラットフォームの設計とプロトコルの概略を定める。そこに利用可能な無線デバイスをどのようにはめ込むことで最も効率的な通信環境を実現できるかを検討する。シミュレーションによる実験を通して、通信プラットフォームの効率の検討を行い、最も適切なデバイスとプロトコルの組み合わせを模索した。また提案プロトコルの評価のため、車車間通信で収集した用いて収集した情報を利用したCO2排出量削減を目的とした信号制御方式への応用事例に関してシミュレーション実験を行い、通信性能が制御結果に及ぼす影響に関して検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
車車間通信と携帯インフラを用いた通信を統合するシステムの設計に向けて、既存の効率の良い車車間通信を用いた情報共有手法を携帯網を使った手法と相互補完させることで効率の良い情報共有が行えることをシミュレーション実験で評価した。その際、導入を予定していた交通シミュレータの購入が予算上の都合から不可能となったため、代替となるシミュレータの利用を検討し、その準備を進めた。研究の要件を満たすシミュレータを準備し、既存の車車間通信通信プロトコルの移植し、携帯通信網に関してはごくシンプルにモデル化して組み込んだ。ある程度、妥当な交通流を再現できるパラメータを模索し、最終的には年度内に基礎的なシミュレーション評価まで行うことが出来た。また、現在までに得られた知見に関して国内の研究会で発表し、識者らからの意見を頂戴した。同様に査読付き国際会議に論文を投稿し、こちらは現在、採否判定の結果待ちである。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度に行った検討をまとめ、多くの環境やアプリケーションで効率的に利用可能な車車間通信プラットフォームとしての完成を目指す。環境やアプリケーション要件により自動的にパラメータを切り替えられるような機構や、複数アプリケーションが混在する環境に対する対応などを検討する。衝突事故防止アプリケーションや、車車間通信を利用した信号制御方式などの具体的なアプリケーションをシミュレータ上に実装し、その効果を検証する。現在、交通状況を自動的に計測して動的に信号制御を行う方式も現実に利用されているが、これらは信号直下の車両の有無や、統計的な交通量に基づく制御になっている。車車間通信を用いて信号制御を行った場合には、交通量のみならず、車群の長さ(何台の車が連なって走行しているか)や、次の車がある信号に到達する予想時刻なども計測できる。そのため、例えば、信号直下を現在通過中の車群があとわずかで途切れる場合には停車回数を減らすために赤信号に切り替えるタイミングを若干遅らせるが、車群が長い場合には効果が見込めないためにタイミングの調整は行わないといった柔軟な信号制御が可能である。このような方法は、道路の効率的な利用に加えて、消費エネルギーの削減に対しても大きな効果があると思われる。24年度にはこういった具体的なアプリケーションの性能評価を通じて、提案プロトコルの性能を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現実的なシミュレーション評価を行うための環境整備のため、サーバやその付属パーツなどを整備する。また、成果報告のための旅費として研究費を用いる。まず前年度に行った研究結果に関して国内の会議で発表し、情報通信分野、特に移動体通信に関する専門家からの意見を頂き、ディスカッションを行うことで成果の妥当性を検討し、追加で必要となる検討事項があればそれらの検討を進める。また、現在採否判定の結果待ちである分を含め、査読付き国際会議での発表を視野に入れて準備を行い、年度内に何らかの形で成果を発表できるよう努める。
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