2012 Fiscal Year Research-status Report
関心持続の脳内機構の解明とブレイン・エージェント・インタラクションの開発
Project/Area Number |
23700137
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野澤 孝之 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (60370110)
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Keywords | 脳・神経 / エージェント / 内発的動機付け / 知能情報学 / fMRI / NIRS / BCI |
Research Abstract |
H24年度は,異なる適応性を持つ仮想エージェントとのヒューマン・エージェント・インタラクション(HAI)時の脳活動をfMRIで計測し,インタラクションとともに変化する内的状態の神経基盤を探る実験を行った.当初計画していたHAIと同時の主観的関心度サンプリングが困難であったことから,ログに基づき「思い通りの応答をさせた」時に高まる内発的報酬,「相手にとって予想外となりそうなアクションを選んだ」時に高い探索意図,「現在のやりとりが平均してどれだけ予想可能か」を表す文脈的統制感,などの内的状態を見積り,その変化に対応する活動を示す脳領域を探索するモデルベース解析を行った.その結果,内発的報酬には視床が正に,探索意図には左前頭眼野および両側の頭頂間溝が正に,それぞれ相関して賦活することが示された.一方,文脈統制感には両側の島皮質およびそれらを取り巻く下前頭回弁蓋部,上側頭回の活動が負の相関を示し,インタラクションが制御できない状況にある時ほどこれらの領域の活動が高まることが示された.これらの知見は,本研究の目的である,ユーザの脳活動からその内的状態をリアルタイムにモニタし,行動を選択する「飽きのこない」ブレイン・エージェント・インタラクションを実現するうえで重要である. また,ヒト同士がコミュニケーションを行っている際の前頭前野の脳活動を超小型NIRSで計測し,インタラクションの有無が脳活動間の関係性に与える影響を探る実験を行った.その結果,インタラクション条件では非インタラクション条件と比較して,Granger causality 解析で定量化される脳活動間の同調的関係性強度が有意に高まることが示された.この結果は,脳活動からインタラクションの質や共感といった個々人に還元されないコミュニケーションにおける創発的な特性にアクセスできる可能性を示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに明らかとなった問題に対処しつつ,H24年度までの計画として予定していたHAI時およびヒト同士のインタラクション時の脳活動計測実験の両方について現在までに実施し,関心の持続するインタラクションを実現するうえで重要な知見を得ることができた. また成果発表については,H23年度に行った「認知的かまえ(readiness)」の変動を反映した自発的活動を示す脳内ネットワークのfMRI研究の成果をジャーナル投稿して査読中であり,適応的エージェントとのHAI時の関心持続の神経基盤に関するfMRI研究およびヒト同士のコミュニケーション時の脳活動同調に関するNIRS研究についても発表準備を進めている. 以上より,東日本大震災による初年度の計画の乱れもほぼ収束し,順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに行った実験(とくに仮想エージェントとのHAIに関するfMRI研究)より,認識の更新とその内発的動機付けへの促進効果が関心持続の重要な要素として新たに示唆されてきた.そこでH25年度は慣れの生じた状況への認識更新とその情動的な帰結の神経基盤についてのfMRI実験を行う.その知見をこれまで得られた,状況統制感に基づく正負の価値評価,飽きに伴う探索意図,認知的かまえのゆらぎなどの神経基盤についての知見と統合する.これらのより,関心持続に重要な内的状態のうちNIRS計測からデコーディング可能なターゲットを選択し,ブレイン・エージェント・インタラクションの枠組を構築,その有効性を実験で検証する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験参加者およびインタラクションデータ処理補助者への人件費・謝金に加えて,本課題の最終実施年度であるH25年度は国際会議発表・英語論文校閲・学会発表および論文投稿(掲載)料などの成果発表への研究費使用が大きな部分を占める.計画実施に必要なソフトウェアライセンス等物品費への使用は年度の早い段階に行い,秋には米国での国際会議発表で使用するほか,謝金や研究成果発表への使用は随時行う.
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