2011 Fiscal Year Research-status Report
ユーザ割り込み拒否度推定に基づく仲介による円滑なインタラクション開始支援
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23700139
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
田中 貴紘 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80451988)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ヒューマンインタフェース |
Research Abstract |
本年度は,申請者が先行研究として提案していた,PC作業時の操作履歴(キー,マウス等)からユーザの状態(割り込み拒否度)を推定する手法を,PC作業と非PC作業(デスクワーク)の混在状態でも推定が可能となるよう,ユーザの頭部運動履歴を取り入れることで,拡張に向けた取り組みを行った.申請者は,非PC作業中の頭部位置・運動が割り込み拒否度と相関し,特に頭部の後方への移動と上方への回転時に拒否度が有意に低下することを確認していたため,まず,この頭部運動がPC作業と非PC作業が混在する場合においても,作業中の割り込み拒否度推定に有効であるかの検討を行った.頭部運動の内,どのような指標が推定に有効であるか,また既存のPC操作履歴に基づく推定法との組み合わせ方法を検討するため,リアルタイムモーションキャプチャシステムOptiTrackとを用いて,デスクワーク作業中のユーザに対する割り込み実験を行い,実験中の頭部運動,およびPC操作履歴の収集と分析を行った.分析の結果,混合作業中の頭部運動とPC操作履歴に関する6つの指標が得られた.さらに,このうち2種類の指標(操作検出時間当たりのキー・マウス操作比率,5秒間の頭部前後位置差)を,前述のPC作業時割り込み拒否度推定法に組み込んだところ,拒否度推定の適合率が10~15%,再現率も20~30%の向上が見られ,混合作業時への適用可能性を示唆する結果が得られた.また,実システムにおける実装を考慮すると,頭部位置・運動を取得する方法は,簡便でかつ一般的なセンサ・デバイスが望ましい.そこで,広く普及しているWebカメラと,近年注目されている3次元距離センサKinectを入力デバイスとし,画像処理ライブラリであるOpenCVの顔検出機能と併用した,簡易頭部運動取得システムを実装した.予備実験により,頭部運動検出は可能であったが,精度改善も必要であった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
頭部運動に関連する6指標の内,2種類(操作検出時間当たりのキー・マウス操作比率,5秒間の頭部前後位置差)を,申請者が提案するPC作業時割り込み拒否度推定法に組み込んだところ,拒否度推定の適合率が10~15%,再現率も20~30%の向上が見られ,混合作業時への適用可能性を示唆する結果が得られた.また,Webカメラと3次元距離センサKinectを入力デバイスとし,OpenCVの顔検出機能を適用することで,簡易頭部運動取得システムを実装した.精度改善の余地はあるものの,頭部運動検出が可能であることを確認した.
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Strategy for Future Research Activity |
拡張した割り込み拒否度推定法の実環境における有効性の検討と,推定に基づき,ユーザと他ユーザ・情報システムとの間のインタラクションを仲介する秘書エージェントによる,円滑なインタラクション開始支援法を提案し,実験による有効性の検証を行う.エージェントは,ユーザのPC入力情報と頭部運動を元に,割り込み拒否度推定を行う.また,エージェントは,他ユーザからの会話開始要求や他の情報システムからの情報提示要求を受けると,これらの代わりにユーザの低拒否度時に合わせて,自律的な働き掛け(間接的割り込み)を行う.働き掛けは,先行研究の成果を応用し,人が日常的に行う,相手の様子を伺う行動としての視線行動(共同注視,視線交差)とジェスチャに着目し,身体性を持ったエージェントがこれらを用いてインタラクション要求の存在をアピールする.アピールに気付いたユーザが,エージェントに能動的に情報確認し,インタラクションを開始することが出来る.以上により,割り込む側と割り込まれる側を逆転させた,円滑なインタラクション開始支援を行う.本研究では,これを調停によるインタラクション開始と呼ぶ.割り込み拒否度の一時的な低下時間は2秒程度であり,適切なタイミングでの割り込みは人手では困難なこと,また,状態推定は本質的に推定誤差が存在し,従来のポップアップや音による直接的な提示方法では,推定を用いても作業を阻害する危険性があることから,エージェントの調停は効果的と考えられる.また,PCに常駐するエージェントの表示領域を併設した液晶小型モニタ上とする.これは,ユーザの作業領域を阻害しないだけでなく,専用領域に常に存在し仲介を行うことをユーザに意識させることで,エージェントに対する情動を喚起させ,エージェントに対する信頼感・親近感を与えることで,推定誤差等の不具合発生時のシステムに対する心理的な悪影響の緩和が期待できる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
東日本大震災の影響で予定していた国際会議が中止となり,参加費・宿泊交通費等が使用されず,また,論文投稿時期がずれたことで投稿料への年度内使用が出来なかったため,次年度使用額が発生した.そこで,ユーザの頭部運動取得装置の精度改善に向け,OpenCVによる顔検出精度が想定よりも低いことから,高精度でカメラ画像から顔検出を行うことのできるソフトウェアであるfaceAPIと,より高性能のWebカメラを,次年度使用額を用いて新たに購入することを計画している.また,被験者実験の実施に向け,秘書エージェントを常駐させるPCと表示領域として使用する小型モニタの購入に使用する.これに加え,収集した実験データの保存用に,ストレージサーバと大容量HDD,DVDROMの追加購入に使用する.さらには,本研究成果の国内学会発表,国際会議発表,および,論文投稿を行うための費用として使用する.
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Research Products
(7 results)