2011 Fiscal Year Research-status Report
数値解析と模型測定による頭部伝達関数の生成メカニズムの解明
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23700142
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
大谷 真 信州大学, 工学部, 准教授 (40433198)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | バーチャルリアリティ / 聴覚ディスプレイ |
Research Abstract |
高臨場感音再生技術を実現するための有望なアプローチの一つとして、音源から両耳までの音響伝達関数を表わす頭部伝達関数(HRTF: Head-Related Transfer Function)を用いた聴覚ディスプレイ(VAD: Virtual Auditory Display)がある。VADの性能は,使用されるHRTFと受聴者のHRTFが異なる場合に大きく低下することが指摘されてきたが,受聴者の頭部運動に追従可能な動的VADなどにより音像定位精度は大きく改善されることが分かっている。しかし,「高臨場感」という大きな観点から見れば動的VADの使用だけでは不十分であり,やはり使用されるHRTFと受聴者自身のHRTFのマッチングの問題が解決されなければVADの真の高精度化・高臨場感化は実現できないと考えられる。そのためには,ヒトの頭部・耳介形状の個人差を原因として生じるHRTFの個人差を補償する必要があるが,HRTFの生成メカニズムには明らかにされていない部分が多い。本研究では,数値解析と拡大模型を用いた実測によりHRTFの生成メカニズムを詳細に検討することで,人体の物理形状とHRTFの関連及びHRTFの個人差の要因を明らかにし,VADで使用されるHRTFを各受聴者個人に対して最適化するための知見を得ることで,聴覚ディスプレイの高精度化・高臨場感化を目指す。本年度は以下の項目を実施した。1.被験者1名の耳介コンピュータモデルの作成,及びHRTFと耳介表面の音場解析2.実耳HRTFの測定3.拡大耳介モデルの作成1及び2の結果の比較により,数値解析によるHRTFの算出結果の妥当性が確認された。また,3により,次年度以降に行う拡大耳介モデルによるHRTF及び耳介表面音圧の測定の準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付決定金額により実寸耳介モデルを作成できなかったが,実耳によるHRTFの測定結果との比較により,数値解析によるHRTFの計算値の妥当性を示すことができ,当初の目標は達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に作成した拡大耳介モデルにより,HRTF及び耳介表面の音圧分布を測定し,数値計算により算出した結果と比較することで,その妥当性を検証する。また,HRTFの個人差を生み出す要因を明らかにするために,複数名の耳介コンピュータモデルを作成するとともに,HRTFの特性に影響を与える耳介形状特徴量について検討を行う。さらに,これらの結果に基づき,複数被験者の耳介モデルを解析対象としてHRTF及び耳介表面の音場の数値解析を行い,耳介キャビティ内で生じる音響物理現象とHRTFの特徴の関連を観察し,HRTFの特徴の生成メカニズム及び個人差を生じさせる要因の解明を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
拡大耳介モデルを用いた音響計測実験のために,音響用多チャンネルパワーアンプ,マルチチャンネルDA変換器,及びこれらに関連する電子部品・ケーブル・コネクタ類や解析データ格納のための記憶装置などの消耗品を購入する。また,情報収集・学会発表のために電子情報通信学会・音響学会等の研究会及び総合大会への参加のための旅費,学会参加費,投稿料として使用する。
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