2012 Fiscal Year Research-status Report
人間の内的制約と思考特性に着目した新世代コミュニケーションメディアの開発
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23700163
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
小倉 加奈代 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 助教 (10432139)
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Keywords | コミュニケーション / CMC / テキストチャット / マルチスレッド対話 |
Research Abstract |
本年度は以下2つの課題を実施した.課題(1):話者の自由な発言機会と複数話題の同時進行,および,人間の忘却メカニズムを応用した議論の精錬化を可能とするコミュニケーションメディアのコンセプト立案.課題(2):社会的・文化的要因および人間関係に影響を受けずに自由な会話を可能とするコミュニケーションメディアの実装および有効性の検証. また,上記2つの課題の実施により以下の結果を得た. 課題(1):新たに構築するメディアが,現状のコミュニケーションに対する要求に応えられるかを検討するため,一般のコミュニケーションメディア嗜好の調査結果と,ベースとなる2つのシステムの特徴とを比較,検討した.その結果,コミュニケーションメディア嗜好の調査結果から,特に若年層に関して,「パケットの小さなメディアほどユーザ数が多い」,「濃度が薄いやりとりを長く,高頻度で行う」ことが明らかとなった.ベースとなる2つのシステムの特徴と照らし合わせたところ,両システムともに,パケットの小さなメッセージ交換に適したシステムであり,インタフェースデザインの工夫することで,一般のコミュニケーションに対する要求に応えうるメディアの実現可能性が高まることを確認した. 課題(2):前年度の結果を基に,プロトタイプシステムを構築し,試用実験を行った.その結果,プロトタイプシステムが,参加者間の均等なコミュニケーション機会を提供し,特に上下関係の制約を解消するために有効に機能することを確認した.さらに,文化的・社会的要因と関係する「互いに遠慮しあう」現象に着目し,食事場面の行動分析を行ったところ,相手の出方を窺い,行動選択を行っていること,行動の停滞が起こった際に,誰かが一度停滞状態を破ると,行動の活性化が生じやすいことを確認し,この結果が新たなコミュニケーションメディアの1つの仕掛けとして利用できる可能性を見いだした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,最終的に開発予定である以下3つのコミュニケーションメディア(1)複数の時間流による忘却のメカニズムを応用して議論記録を自然に整理する機能をもつコミュニケーションメディア(2)複数話題の同時進行が可能であり,誰もが発言したいその時に発言が可能なコミュニケーションメディア(3)社会的・文化的要因に影響を受けずに多様な意見を表出可能なコミュニケーションメディアのうち,(2)と(3)に関するシステム構築作業と行う予定であった. 結果として,(2)については,(1)のシステムとあわせて改良することに計画を変更し,現段階で,コンセプトデザイン立案作業が完了し,現在システム開発作業の段階である.また,(3)についても,当初予定していたメディアの開発と検証作業は完了しており,全体の進捗状況として,概ね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は,最終的に開発予定である以下3つのコミュニケーションメディア(1)複数の時間流による忘却のメカニズムを応用して議論記録を自然に整理する機能をもつコミュニケーションメディア(2)複数話題の同時進行が可能であり,誰もが発言したいその時に発言が可能なコミュニケーションメディア(3)社会的・文化的要因に影響を受けずに多様な意見を表出可能なコミュニケーションメディアのうち,(1)と(2)を統合したコミュニケーションメディアに関わるシステム構築と,(3)に関わる本年度までの知見を,通常のコミュニケーション場面に取り入れるべく,(1)と(2)の統合システム内での実現方法の考案とコミュニケーションへの影響を検証を行い,好影響があることが確認できれば,適宜実装および検証実験を行う予定である.また,(1)-(3)以外のアイディアとして,テキストベースのコミュニケーションの大きな利点の1つである「メッセージの編集過程」を音声ベースのコミュニケーションでも実現可能とすることを目指し,実現方法の検討を行う予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は,国外での国際会議発表のため旅費の大幅な出費を見込んでいたが,国内開催の国際会議発表を行うことになったこと,システム開発作業に関して購入予定であったサーバと実験用PC類について,現在の所属研究室に使用可能な機器があったため,次年度への繰り越しが発生した. 次年度は,夏以降に所属変更の予定があり,本年度購入する必要がなかったサーバや実験用PC類および開発環境を一部整備する必要があるため,本年度の繰り越し分を含めた物品費用の出費が予想される.また,国際会議への論文投稿の用意があり,さらに,国内会議等でも発表を行う予定があるため,旅費についても,昨年度以上の出費が予想される.また,査読付き論文誌への投稿も予定しており,採録された場合には印刷費用を捻出する必要がある. なお,今年度,未使用金が発生した場合には,国際会議,国内会議への論文投稿および発表を行うこと,来年度分の予算と合算しサーバ,実験用機器の物品購入を行うことを予定している.
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