2011 Fiscal Year Research-status Report
視線に基づく模倣インタラクションによる自己の興味への気づきとその評価方法の確立
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23700168
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
平山 高嗣 名古屋大学, 情報科学研究科, 特任助教 (10423021)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | マルチモーダルインタフェース / 注視行動 / 模倣 / 興味 / 気づき |
Research Abstract |
自己の潜在的状態への気づきは,いつ生まれるのであろうか?本研究では,ユーザの注視行動をシステムが模倣することでユーザに自己の潜在的な興味への気づきを促進する注視模倣インタラクションを設計し,その効果を評価する.その過程で,(1)気づきを促進する模倣インタラクションの構成要素を明らかにし,(2)模倣に対するユーザの注視反応行動,注視協調行動を数理モデル化,(3)生体指標を含めたマルチモーダルデータに基づく気づきの兆候の抽出を目指し,大規模な被験者実験を通じて注視模倣による興味への気づき理論を深化させる.本研究で得られる成果は,興味と注視行動の関係を明らかにするための有用な知見になると考えられる. 平成23年度は,ディスプレイに提示された擬人化エージェントを通して,システムがユーザの注視行動を同期同調して模倣するGaze Mirroringを定量的に評価した.Gaze Mirroringによる注視行動のフィードバックは,(1)ユーザに対して鏡の役割を果たすことで自己の注視に対する気づきを与える,(2)共同注視の効果によって興味を反映した注視行動を引き出す可能性がある.そこで,ユーザがディスプレイに提示された複数の商品から好みのものを選択する状況を設定した実験を行い,興味を持つ対象への注視持続時間が有意に増加するというGaze Mirroring効果を確認した.そして,電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーション基礎研究会において「コミュニケーションと気づき」セッションを企画し,このGaze Mirroring効果について多分野の研究者と議論を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
注視模倣の基盤的な模倣方略である同期・同調模倣(Gaze Mirroring)について,従来は注視対象への累積注視時間を評価のための指標としていたが,追試を加えて注視持続時間と注視パターンに基づいたGaze Mirroring効果を確認した.この追試による検証は当初計画されていなかったが,注視模倣インタラクションの最も基礎的な特性を導出し,模倣に対するユーザの注視行動を数理モデル化するための重要な知見を獲得した. また,所属機関の異動が,多様な分野の研究者との議論を行う機会を持つ一要因となり,モデルおよび評価方法を再検討する知識を多く得るに至った.特に,電子情報通信学会パターン認識・メディア理解研究会で発表した「人間の視覚的注意の計算モデル」についてのサーベイ論文に関わる活動は,注視模倣による興味への気づき理論の議論を深化させる. このように,当初の研究実施計画を変更して研究活動を遂行したため,計画よりやや遅れているが,研究推進を加速し,研究目的を達成するための重要な成果を挙げている.
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Strategy for Future Research Activity |
システムによる注視模倣を,ユーザが自己に対する模倣と認知するか,他者に対する模倣と認知するかによって,ユーザの注視行動に差異が現れる可能性がある.平成24年度はまず,模倣方略のパラメータを制御し,いくつかの模倣パターンに対する注視行動を比較分析する.また,先行実験において,同期同調した注視模倣に対して実験参加者の多くは不快さや違和感を感じていたため,主観によって自然さを評価し,上述の比較分析結果に基づいて注視行動と興味の関係も明確化させられる最適なパラメータを導出する. 平成25年度には,前年度で比較分析に用いた視線計測データに基づいて,注視模倣インタラクションを数理モデル化する.そして,被験者実験を追加することでユーザの注視行動の生成モデルとしての妥当性を検証する.平成24年度に行う実験では,視線計測とともに生理指標計測も行う計画であり,注視行動の状態遷移と生理指標から抽出した特徴の時間変化との関係を分析し,ユーザが自己の興味に気づく兆候の抽出の可能性を議論する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は海外研究者との研究連携を計画し,打ち合わせのための経費を計上していたが,実現することができなかった.その経費分が平成24年度に繰り越される形になる. 平成24年度は主に,海外研究者との研究連携,模倣方略のパラメータを制御した被験者実験,生体指標計測用設備の準備および成果発表のために研究費を使用する計画である.
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Research Products
(6 results)