2011 Fiscal Year Research-status Report
真性粘菌変形体の計算,記憶,学習能力の解析とその知能情報学的展開
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23700187
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
白川 智弘 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 電気情報学群, 助教 (60582905)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 真性粘菌変形体 / 学習と知識獲得 / 生物計算 / アロメトリー |
Research Abstract |
真性粘菌 Physarum polycephalum の変形体は,単細胞多核の巨大アメーバである.本研究課題は変形体が有するであろうと予測される計算,記憶,学習能力についてその存在を明らかにすると同時にそのメカニズムを明らかにすることを目的とするものであるが,一連の実験とシミュレーションにより以下のような成果が得られた.1.変形体は,20℃から30℃程度の温度範囲においては高温に向かう走性を持つが,低温条件(20℃)にのみ豊富な栄養源を準備することにより,変形体に低温の場にのみ栄養源が存在するという条件での連合学習を行わせ,走温性を逆転させることに成功した.即ち変形体に学習を行わせることにより,変形体が従来有している走性を変更することに成功した.また,このような「細胞による学習」を可能とする分子ネットワークは,比較的単純かつ少数のメンバーから成るネットワークによって実現可能であることが示された (Nano Com. Net. 2, 99-105, 2011).2.過去の我々の研究において変形体の細胞運動・平面探索におけるアロメトリー則が複数発見された.即ち,2次元形状の変形体が平面上において被覆する面積は変形体の重量の 3/4 乗に比例し,変形体の運動速度は体長に比例することが示されたが,原形質流動のダイナミクスに基づきこれらを統合的に解釈可能であることが示された (Int. J. Artif. Life. Res. 3, 22-33, 2012).3.変形体における新規な走性を発見した.即ち,変形体は走磁性を持ち,磁場の方向に応じてその運動方向を変えることが明らかとなった.また,このような走磁性を利用することによる,変形体を用いた論理演算実装の可能性が示唆された(第49回生物物理学会年会,1F1348).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は細胞における計算,記憶,学習能力を探るという比較的広範な目的を持つ課題であり,その目的を達成するためにいくつかのサブテーマを並列的に展開しているが,そのそれぞれにおいて一定以上の成果が得られている.具体的には研究実績の概要に示す通り, 1.変形体が学習能力を持つ可能性についての知見 2.変形体におけるアロメトリー則の発見とその統合 3.変形体における新規な走性の発見 が主な成果として得られている.また,関連研究も含めると,昨年度の研究発表における実績は,査読付論文9編,学会発表8件であり,これらの事実が示す通り,本研究課題は当初予定していた計画以上に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には現状の目標設定及び現状のペースを維持しつつ研究を推進していくことで十分であると考えられる.具体的な今後の展開としては,変形体が学習能力を持つことの厳密な証明を行うこと,変形体におけるアロメトリー則と,生物一般で成立することが知られているアロメトリー則(生物個体の消費エネルギーは個体の重量の 3/4 乗に比例する)との関連についての研究することなどが直近の目標として挙げられる.また,本研究課題は次年度で最終年度を迎えるため,複数展開しているサブテーマ間の関連性を前面に押し出した統合的な実験・シミュレーションを遂行する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在進行中の研究をサポートする物品の購入及び研究発表をサポートする旅費を主として研究費を使用する予定である.研究方針の大きな転換や,高額な物品の購入は予定していない.特に,今年度は研究課題の最終年度であるため,研究発表のための旅費使用により大きな重心を置く予定である.
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Research Products
(17 results)
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[Presentation] Cell Motility Viewed as Softness
Author(s)
Koji Sawa, Igor Balaž and Shirakawa T.,
Organizer
IES2011: The 15th Asia Pacific Symposium on Intelligent and Evolutionary Systems
Place of Presentation
京急観音崎ホテル(神奈川県)
Year and Date
2011年12月7日
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