2011 Fiscal Year Research-status Report
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23700198
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
立蔵 洋介 静岡大学, 工学部, 講師 (30372519)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ユーザインタフェース / 音場制御 / スピーカアレー / 逆フィルタ処理 / 室内音響伝達関数 |
Research Abstract |
本年度においては,室内音響伝達関数の同時測定に関する検討を行った.まず,アルゴリズムとして,独立成分分析に基づくブラインド音源分離を用いた測定法についての研究を行った.その結果,例えばスピーカ数4点で受音点数が2点の場合の音響系であれば,従来法で測定するならば全8チャネルを個々に測定する必要があったが,提案法を用いることにより,全8チャネルを同時に測定することが可能となった.したがって,測定時間は従来の1チャネル分の時間と同程度とすることができた.一方,測定精度に関しても検討を行ったところ,従来法と提案法でほぼ同程度の水準であることを明らかにした.また,測定する室内の残響時間や外部雑音のパワーを変動させて測定した場合においても,提案法はそれらの影響に頑健であることが分かった.さらに同時測定を行うチャネル数を64チャネルまで増やした場合であっても,測定精度はほとんど劣化しなかった.これらを総合して勘案すると,提案する測定法は多種多様な環境においても,従来法と比較して高速かつ同精度で音響伝達関数を測定できることが分かった.したがって,どのようなユーザや環境においても手軽に音響伝達特性を測定できる方法であることが示唆された. また,上記測定法を用いることによって,様々な環境下における音響伝達特性の収録・データベース化に着手した.場所や時刻,季節なども影響することから,長期にわたって収録を継続することとした. さらに,2ユーザに対して異なる音響情報を再生する際の逆フィルタ設計法について,基本となるアルゴリズムを考案した.数値計算ならびに簡易受聴試験の結果,提案する設計法の有効性が見出された.また,スピーカアレーによる指向特性の形成に関する検討も行い,数値計算によってその実現可能性を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
音響伝達特性の同時測定手法において,当初の目標である「従来法における1チャネルの測定時間と当程度の時間での多チャネル同時測定の実現」を達成することができた.その測定精度についても,従来法と同等であることが明らかとなった.このことから,当初の予想を上回る研究成果であった.さらに,次年度以降に行う一部研究を前倒して実行し,当初想定した手法やアルゴリズムなどが有効であることを見出した. これらを総合して勘案すると,今年度は当初の計画以上に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
スピーカアレーの配置や制御フィルタの先行検討の結果,指向性の高いスピーカシステムの実現可能性が示された.また,2ユーザを対象とした音場制御において,互いに再生される音の干渉を抑圧する逆フィルタ設計法についても,その有効性が見出された.よって今後はそれら知見を元に,システムの試作実装を行い,評価データを収集して実用化に向けて残された検討課題を抽出すると共に,その解決策について検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度において約42,000円の次年度使用額が生じたが,これは本年度購入した数値計算ソフトウェアにおいて当初想定した価格よりも安価に入手できたことや海外への成果発表旅費が当初予定より下回ったことなどに起因する. システムの試作実装を行うために,考慮すべき条件の洗い出しやアルゴリズムの検討が必要となることから,専用の数値計算ソフトウェアのライセンスを科研費にて追加購入することにより,数値計算による検討の強化を図る.また,積極的に研究成果を発表するため,学会での成果発表旅費やその学会参加費,および論文投稿料などに研究費を使用する計画である.
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