2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23700198
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
立蔵 洋介 静岡大学, 工学部, 講師 (30372519)
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Keywords | ユーザインタフェース / 音場制御 / スピーカアレー / 逆フィルタ処理 / 室内音響伝達関数 |
Research Abstract |
本年度においては,逆フィルタ処理の観点から複数ユーザに対して異なる音場を生成する手法に関しての検討を行った. まず,一般的な住宅などにてシステムが展開されることを想定し,高残響下において制御点数よりも少数個のラウドスピーカによる制御方法の検討を行った.具体的には,2ユーザを想定し,各ユーザ頭部周辺を囲むよう制御点を配置し,周波数帯域ごとに制御点数を切り替えることを試みた.すなわち,低周波数帯域では全制御点を制御するのに対し,高周波数帯域では特定の制御点のみを制御することによって,高域のクロストーク成分除去を行う.実環境データを用いた数値計算の結果より,提案手法では従来の制御手法と比べ,10dB程度クロストークが抑圧可能であることが示された.さらに残響下においてヘッドホンを用いた主観評価実験を行った.このとき,ユーザの頭部状態を固定,40度回転,5cm移動の3状態とした.結果より,いずれの状態においても提案手法を用いることによって従来手法よりもクロストークが抑圧されて聞こえることが確認された.これらの結果より,スピーカ数,受音点数を削減しつつ,従来よりも高精度にクロストーク成分を抑圧しながら受聴領域を拡張することに成功した.このことから,本科研費研究における主目的に対して,まずは大きな成果を得ることができた. 次に,スピーカ配置を密集されることにより,逆フィルタ処理と波面合成の統合に関する検討を行った.具体的には,研究代表者らがこれまでに提案してきた逆フィルタ設計手法NBSFCを活用することにより,ユーザの側面に光は通すがスピーカからの音を通さない「音の壁」を作ることを試みた.数値計算の結果より,何らの信号処理を通さない結果と比べ,約8dBの音圧差を形成することに成功した.これより,このスピーカアレーを並列配置することによる複数ユーザへの拡張に目処をつけることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本科研費最大の目標である「住居のような比較的狭い空間での2ユーザに対して異なる音場の生成を実現」について,まず1つの解決手法を提案することができ,その達成に十分な目処をつけることができた.制御精度についても従来法よりも優れていることが,客観評価および主観評価の両面から明らかとなり,当初の予想を上回る研究成果を得られた.さらに,次年度に行う予定であった一部の研究を前倒して実行することができ,当初想定した手法やアルゴリズムが有効であることが見出された. これらを総合して勘案すると,研究は当初の計画以上に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
1システムで複数ユーザを制御する方法については,手法の構築という点においてはほぼ達成することができたので,今後はその実環境での動作に関する精緻化,およびそのセットアップに関する簡易化に関する検討を行う予定である. 逆フィルタと波面合成の統合に基づく1ユーザ用システムの並列化については,その実現可能性に関して数値計算により解析を行う.また,実環境下において実際にシステムを組んで試聴することにより,実現のための問題点の洗い出しを行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度において約26万円の次年度使用額が生じたが,これは当初国際会議に参加予定であったものの,本務先の授業担当とのバッティング問題が解消できなかったために参加を見送ったことによるものである. 本年度においては,すでに国際会議に参加して研究成果を発表することが決定したためにその旅費に当てることを計画している.また,積極的に研究成果を発表すること,および内外の最新の研究動向を調査するために,学会への成果発表旅費やその参加費,および論文投稿料などに研究費を使用する見込みである.
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