2012 Fiscal Year Research-status Report
物体表面の光沢性を利用した三次元形状計測技術の開発
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23700207
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
満上 育久 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (00467458)
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Keywords | 国際研究者交流 / コンピュータビジョン / 三次元形状復元 |
Research Abstract |
三次元形状復元は,コンピュータビジョンにおける重要な課題の一つである.近年,Structure from Motion (SfM) やMulti-view Stereo (MVS) などの手法については,比較的安定に動作するオープンソースソフトウェアとしても提供されるようになり,これらの技術を誰もが容易に利用できるようになってきている.しかし,これらの手法が適用できるシーンはまだまだ非常に限定的であり,我々の日常生活の中でよく見かけるテクスチャの少ない物体や光沢物体,透明物体などには適用できない.本研究課題は,これらの物体を対象とした新たな三次元形状復元手法の構築を目的とする. 平成23年度においては,対象物体を複数の視点から撮影した画像を用いて,そこから疎な三次元点群と鏡面反射ハイライトを獲得し,密な三次元形状復元を行う手法を提案した.この手法では,対象物体の表面形状を多項式曲面で表現し,特徴点ベースのSfM によって得られる三次元点群と鏡面反射ハイライトから得られる法線情報を同時に満たす曲面として算出する.この手法によって,光沢物体の形状復元において,その表面のテクスチャから得られる三次元点群のみを用いるよりも正確な復元が可能となった. この提案手法では,点光源がカメラの視点位置に存在しなければならないという制約があるが,これは一般的なフラッシュ内蔵型のデジタルカメラで対象物体を撮影する際に満たされるものなので,実用上の障壁となることは少ない.とはいえ,手法上の制約ではあるため,その緩和を図り手法を拡張し,カメラと光源が異なる場所にある場合にも三次元形状復元を可能とした. また,SfMを行う上で,処理速度や精度の低下の主要因となる対応点の誤対応の除去について,既存のヒューリスティックなアプローチではなく凸最適化を用いた手法を提案し,処理速度・精度の向上を図った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では,平成24年度は前年度成果の改良および暗室を用いた光学解析を計画していた.しかし,本研究課題が一般的なデジタルカメラやスマートフォンを用いて身の回りの物体の三次元形状復元することを目的としていることを考慮し,後者の暗室を用いた解析よりも,手法の改善を優先すべきと判断した. 改善の1つは,点光源がカメラの視点位置に存在しなければならないという制約の緩和である.我々は前年度の手法を拡張し,カメラと光源が異なる場所にある場合でも,それらがキャリブレーションされていれば,三次元形状復元可能な手法を提案した.CGシーンでの評価実験を行い,光源・カメラ・対象物体の相対位置関係によって一部精度が低下することがあるものの,概ね良好に復元できることを確認した. もう1点は,SfMの改良である.前年度の提案手法に基づく三次元形状復元においは,SfMによって得られる三次元点群が,点の数が疎であっても個々の点の位置はある程度正確でなければならない.これを満たすためには,異なる視点からの画像において正確な点の対応を得る必要がある.しかし,これには一般に多くの誤対応が含まれる.この誤対応を除去する方法として,既存手法ではRANSACと呼ばれるランダムサンプリングの繰り返しに基づくヒューリスティックなアプローチが取られるが,この方法では一般に解の最適性は保証されず,またそれを保証しようとすると全探索となり膨大な処理時間を必要とする.この問題に対して我々は,Sparse Bayesian Learning (SBL)という凸最適化手法を導入することによって,現実的な処理時間で解の最適性を保証できる手法を提案した. なお,以上の成果はThe 7th International Workshop on Robust Computer VisionにおいてBest Poster Awardを受賞した.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に残っている課題は,本年度実施したSBLを用いた新たなSfM手法に関するさらなる検討と評価,およびこれまでの成果のモバイル端末への実装である. SfM手法については,多視点のうちの任意の2視点に関する局所的な最適化については実装が完了しているが,全体最適化が未完成である.処理速度と精度の両面を考慮した最良の最適化手法の設計と実装,および実シーンを用いた性能評価を行う必要がある. また,システム実装を行うモバイル端末として,タブレット・スマートフォンの利用を考えており,現在そのハードウェアスペックや開発の容易性などについて調査を行っているところである.最終的に選定した端末に,本研究課題の提案手法を実装し,その性能を評価する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費としては,システム実装に用いるモバイル端末を検討するために,複数のタブレット・スマートフォンを購入予定である.また,その開発に必要となるソフトウェアおよびPCが必要となる. 旅費として,Microsoft Research Asiaに訪問研究員として滞在し共同研究者の松下康之氏と意見交換を行うための渡航・滞在費,および,国内外での会議に参加し成果発表・意見交換を行うための渡航・滞在費などを計上する. また,論文誌への投稿も予定しており,その投稿料・別刷料・英文校正費用なども必要である.
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