2011 Fiscal Year Research-status Report
静脈像にもとづく触覚機能の解明およびタッチインタフェースの開発
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23700213
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
星 貴之 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80537704)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 静脈 / タッチインタフェース / 触覚 / 近赤外光 / 指 |
Research Abstract |
本研究は、指の皮膚内部の静脈を「生体内にあらかじめ配置されたマーカー」とみなし、それを活かして皮膚内部の変形を非侵襲的な観察や、タッチインタフェースとしての応用を目指すものである。指先を板に押し付けると血流が阻害され静脈像が不鮮明になることが知られている。そのため、静脈認証においては指を検出面に触れさせないか、軽く接触した状態で認証が行われる。接触時においても静脈が観察できることは申請前の予備実験で確認されているが、その定量的評価は行われていなかった。そこで平成23年度は、静脈を観察するための撮像系の構築と、皮膚表面に与えた変位と皮膚内部(静脈像)に生じる変位の関係を定量的に調べる実験を行った。撮像系については予備実験と同様に、爪側から赤外線LEDで照明し、腹側からCMOSイメージセンサで撮影するものとした。指とイメージセンサの間にアクリル板を配置し、板に指を押し付けたときの様子を観察した。皮膚表面に与える変位は(1)指腹を板に垂直に押し付けた場合、および指腹と板の接触面にずれが生じないように指全体を(2)中心軸に垂直な方向にずらした場合(3)中心軸に平行な方向にずらした場合(4)回転させた場合、の4通りとした。実験には研究代表者の右手示指を用いた。(1)はどの程度の押し付け力まで許容されるかを確認する目的で行った。その結果、0.3Nまでの押し付け力であれば静脈像が観察できるという知見が得られた。また(2)(3)(4)において、静脈像の指定した領域と指輪郭の相対変位および相対角度変化が、指輪郭の変位・角度変化と相関があることが確認された。これは、タッチインタフェース、さらには触動作中の皮膚内部の観察が有望であることを示す結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の研究計画として(1)撮像系の最適化(2)表面変位と内部変位の関係の調査の2つを掲げていた。(2)は達成されたものの、(1)が達成されていないことから「区分 (3)やや遅れている」と自己評価した。しかし全体の進行を遅延させるほどの遅れではないと研究代表者は考えている。本年度の研究計画は撮像系に変更を加えることで新たな情報の取得を目指すことであり、それと並行して最適化を行うことは可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
鮮明な静脈像が得られるよう撮像系の最適化を図りつつ、変更を加えることで新たな情報を得ることを試みる。例えば、(1)カメラをステレオにする。これにより静脈の三次元的構造を取得し、皮膚表面に対してせん断方向だけでなく垂直方向の情報も得る。(2)顕微鏡と組み合わせて微細な振動を計測することも考えられる。また(3)近赤外にも感度を持つ高速カメラを用いて指内部に生じる振動分布を直接観察できれば、皮膚表面の振動分布と比較することにより皮膚組織による減衰、位相遅れ、弾性波の反射・干渉などの情報が得られる。(4)パルスオキシメータ(異なる2つの波長を指に照射し、その透過度から酸素飽和度を求める医療機器)と同様に、異なる複数の波長を用いることで計測上の利点があるかどうかも探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定に入れていた高速カメラのレンタルを行わなかったため。これについては平成24年度に実施する予定。
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