2011 Fiscal Year Research-status Report
人工マトリクス・スキンと階層型情報処理モデルによる触覚知覚に関する研究
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23700226
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中本 裕之 神戸大学, システム情報学研究科, 助教 (30470256)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 多国籍 / 触覚センサ / スキンセンサ |
Research Abstract |
皮膚は成人において1.6~1.8平米の面積と3~5kgの重量を有しており、人間のもつ最大の器官とも呼ばれる。人間はその皮膚を経由して触覚を知覚しており、触覚は人間の日々の生活におけるあらゆる作業に対して利用されている。したがって、対象物との接触時の機械的変形を検出し、それを触覚情報として定量化できる触覚センサや人工スキンが実現すれば様々な応用が可能と考えられる。本研究では,次の3つの特徴をもつ触覚センサを開発している.1つ目の特徴は,人間の皮膚と同様に柔軟に対象と接触できることであり,2つ目の特徴は断線が生じにくく、摩耗のある接触面の交換が容易な単純な構造であることである.さらに,3つ目の特徴として,接触に関する定常的な刺激(変位・圧力)と速い刺激(振動刺激)を異なる素子で同時に計測できることを挙げており,最終的に各素子からの出力を統合して扱い、高次の情報処理で知覚を行うことまでを計画に含めている. これまでの研究において,センサを用いて食品を押しつぶした際の応答を検証してきた.これには、階層型の知覚モデルを用いて処理を行い、知覚方法に関する研究を進めてきた。さらに,これまで研究してきた1ユニットからなるスキンセンサを拡張し,2つのユニットスキンセンサをシームレスに成型した2ユニットスキンセンサを開発した.これを評価することにより,接触変形分布の計測の可能性を検証できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ユニットスキンのもつ磁気抵抗素子とインダクタの出力を融合することを目的として、階層型の触覚情報処理モデルの構築を進めている。この触覚情報処理モデルは、人間の脳の解剖学的な知見に基づいて構成する。具体的には、脳の体性感覚野の解剖学的結合が3a野もしくは3b野から1野へ、1野から2野へと階層性を有しており、階層の後方にいくにつれ、より複雑な情報処理を実施するという知見から、3層構造のモデルを作成した。この触覚情報処理モデルは入力層、中間層、出力層の3層をもち、ユニットスキンの各素子の出力を受け、最終的に具体的な脆さや粘着などの触覚知覚を出力する。入力層は、計測目的に応じて処理に用いる入力の選択とローパスフィルタなどの単純なフィルタ処理を行う。すなわち、情報を選択し整える役割を担う。中間層は、入力層から受けた情報の特徴を定量化(例えば、既知の波形との類似度やインパルス状の急峻な変動の回数など)する。出力層は、定量化した特徴量に基づいて脆さや粘着性があるなどの意味づけ行い、それを触覚知覚として出力する。平成23年度の成果としては、中間層までの設計と検証が完了している。出力層は検証を進めているところであり、平成24年度内に成果の発表を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度では、ユニットスキンに対する知覚モデルの提案と検証を進めてきた。平成24年度においては、これを分布化したマトリクス・スキンの製作とそれに対応した知覚モデルの拡張を実施する。このマトリクス・スキンでは、ユニットスキンを分布させるだけでなく、センサ間がシームレスとなる構造とする。シリコンやウレタンなど柔らかい高分子材料を用いて柔軟層を成型し、その成型の過程で磁石を格子状に配置する。マトリクス・スキンを構成するユニットスキンの数は申請時では4×4の16点とする予定であったが、ユニットスキン間のギャップを大きくとる必要性ができてきたため、実験装置の動作範囲も考慮に入れて3×3かそれ以下に数を減らしたマトリクス・スキンを構成する。ただし、当初の予定通り、1点に対する荷重や変位に対してその点の周囲にある複数のユニットスキンによる応答性については、変位や力の精度などに加えてそれらの空間分解能も評価し、分布型触覚センサとしてのマトリクス・スキンの基礎評価を行う。 最終的には、マトリクス・スキンを用いて衣服やカバンの締め付けなど締め付けの程度を定量化し装着感を評価することで、提案するマトリクス・スキンと分布・階層型触覚情報処理モデルの評価の総括とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、マトリクス・スキンの設計・製作に研究費の約160万円を充当する。このマトリクス・スキンの設計に当たり、平成23年度内に試作品を製作する予定であったが、試作後、即座に評価実験で使用可能なマトリクス・スキンを製作した方が作業効率の向上が図れるため、その費用を平成24年度で執行することとした。その他、成果発表などの旅費に30万円、論文投稿費用などに15万円を計上し、その計画通り執行を進める。
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Research Products
(5 results)