2011 Fiscal Year Research-status Report
対人コミュニケーションにおける自走式椅子・机を用いた空間行動の誘導と対話支援
Project/Area Number |
23700232
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高嶋 和毅 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (60533461)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 対人コミュニケーション / ヒューマンインタフェース |
Research Abstract |
本研究では,複数人の対人コミュニケーションにおける対話中の非言語情報を計測・解析し,対話の状況(盛り上がり等)を自動的に推定する手法を検討する.そして,推定した状況に応じて,空間に自然に存在する机や椅子を自動的に動かして対話場に物理的に介入させることで,話者の空間行動(対人距離,向き,位置関係)を誘導し,対話の活性化を図るシステムを検討する. 23年度は,複数人対話状況の推定モデルの検討と,自走式椅子・テーブルトップディスプレイの試作を行った.推定モデルに関しては,対話中の非言語情報をセンサにより取得し,対話中または対話後に行われたアンケート評価値との関連を詳細に調査した.具体的には,重回帰分析によりその両者の相関を解析し,非言語情報を用いて対話状況を数値的に推定するモデルを構築した.そして,過去に提案されているモデルとの差異や精度について検証した. また,自走式椅子・テーブルトップディスプレイの試作・開発に関しては,今年度は自走式テーブルトップディスプレイの開発を先に行い,その評価に重点を置いた.玩具を改造することで簡易な自走式テーブルトップディスプレイを製作し,前進,後退,回転を無線にて制御した.それを複数人対話のシーンへ導入し,提案システムを対話場に介入させた場合とそうでない場合をアンケートにより比較・評価した.アンケート評価では,提案システムによる情報提示の強度とその認知度,対話活性度,対人距離などの空間行動変化などについてデータを収集した.その結果,提案システムを用いて自走型テーブルトップディスプレイを対話場に介入させると,対話に対して強く,かつ行動を誘発するような刺激を与えることが確認できた.また,アンケートや観察結果に基づき,対話の誘導や活性化の可能性を示唆する知見を得た.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度は,複数人対話状況の推定モデルの検討と,自走式椅子・テーブルトップディスプレイの開発を行う予定であった.推定モデルに関しては,対話実験中の非言語情報のセンサ値と,アンケート評価値との関連を重回帰分析により調査した.対話場を推定するための数理モデルであり,個人差などに伴うロバスト性などに課題は残すものの,対話状況の相対的変動は十分に検出できる結果がでており,本研究課題の目標である自走式椅子とテーブルトップディスプレイを用いた対話支援システムへ応用できる段階にあると考えられる.自走式椅子・テーブルトップディスプレイの試作については,テーブルトップディスプレイの開発が進み,玩具を改造した簡易システムと,十分な移動精度と速度を確保した実システムの2つの開発を終えている.また,簡易システムを用いて,実際に被験者による予備的評価実験を実施し,その効果を検証することができている.自走式椅子についても,安全性の確保のための検証段階であり,上記のテーブルトップディスプレイと同様のモーター制御機構を利用したシステム構築の準備が整っている段階である.したがって,概ね順調な進展であると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
24年度には,23年度に開発した対話状況推定モデルと試作した自走式椅子・テーブルトップディスプレイを活用して,対話支援システムの開発を行う.男女を含む複数人(3人以上)による親睦を深める場(パーティ等の一集団)を想定し,システムの実装を行う.対話状況の検出に関しては,推定モデルによる対話の盛り上がり変動とその時間変化,位置センサによって取得できる対話グループの構成とその分布,外れメンバの有無などを中心に扱う.これらの値に基づき,自走式椅子とテーブルトップディスプレイを用いて対話空間の演出および対話支援を検討する.好ましい空間行動の定義は様々に存在するが,ここでは大きな目的として,対話空間における,単位時間あたりの話者間での情報伝達量(発話,頭部方向,ジェスチャの向き等)ができるだけ大きくかつ複数人に対して均等になるような状況を目指して,自走式の椅子とテーブルトップディスプレイの動作を決定する.例えば,椅子の提供と回収で,対話の流れやテンポなどを制御することや,椅子を自動的に移動,回転させることでユーザの視点や視界を変えることなどを計画している.さらに,自走式テーブルトップディスプレイの提供と回収により,人の立ち位置やグループの再構築などを促すことも考えている.なお,開発の進度と計画を考慮し,椅子は2つ,テーブルトップディスプレイ1つの環境で支援システムを構築する予定である.その後,アンケート主体の実験を被験者同意の上に実施し,システムの有効性を評価する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は,23年度に試作した自走式椅子・テーブルトップディスプレイの改良を行う必要があり,その予算を計上する.装置の大部分は継続して利用するが,被験者実験に向けて安全性などを高めるために,ハードウェアのチューニングに加えて,位置の計測部やソフトウェアに関してさらなる改良を行う.また,23年度および24年度の研究成果を国内・国外学会で発表するための旅費および印刷費等を計上している.
|