2011 Fiscal Year Research-status Report
観光地における旅行者の思い出形成要因の分析と体験誘発型街歩き支援システムの構築
Project/Area Number |
23700247
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
木下 雄一朗 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (70452133)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 感性情報学 / 思い出 / 観光 / ユーザインターフェース / 情報システム |
Research Abstract |
観光産業において,旅行者にいかに思い出に残る旅を提供するかという問題は重要な課題の一つである.本研究では,旅先での散策に重点を置いた「街歩き」と呼ばれる旅行形態に着目し,旅行者のどのような行動が旅行後の思い出形成に関わっているか,そして,その思い出がどのように形成されるのかを,観光地での街歩き実験と実験後の継続的な追跡調査を通して解明する. 本年度は,街歩きにおける旅行者の思い出形成要因について調査をするため,京都における街歩き実験を行った.実験では,過去に京都を訪れた事のない8名の被験者を対象とし,互いに顔見知りの2名を1グループとして1 km 四方のエリアを散策してもらった.各グループには,自由に経路を選び,その途中で気になるものがあった際,寄り道や写真撮影を行って良いという教示を与えた.被験者の位置情報や歩行速度,街歩き中の会話の内容をGPSおよびICレコーダーで記録するとともに,実験者が被験者の街歩きの様子をビデオにより撮影した. 実験終了直後,1週間後,1ヶ月後の計3回,街歩きの思い出に関するアンケート調査を行った.実験に参加した各被験者に,街歩きの過程で思い出として残っている事項をできるだけ多く忠実に書き出してもらった.街歩き実験中に記録した被験者の行動と,被験者が回答した内容を対応づけて分析した結果,思い出形成に関わる属性として,街歩き中の発見や体験が重要であるという知見を得た.また,その体験に偶然性が加わる事により,より強い思い出が形成されることも示唆された. この実験で得られた調査結果を基にして,街歩き中の旅行者に何らかの発見や体験が得られると予測される地点を通知する,体験誘発型街歩き支援システムの設計・試作を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画であった,街歩き実験の実施と旅行者の思い出形成要因についての調査に加え,次年度以降の計画を一部前倒しし,体験誘発型街歩き支援システムの設計を行った.また,街歩き中の旅行者にナビゲーション対象地点の存在やその方角を通知する携帯型デバイスを試作した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,本年度実施した街歩き実験に対する追跡アンケート調査を行うとともに,調査結果を踏まえて,体験誘発型街歩き支援システムの本格的な構築を行う.旅行者の思い出形成につながる体験が得られると予測される地点を保存するデータベースを構築するとともに,その地点を旅行者に提示するデバイスを数種類試作する.さらに,構築したシステムを用いた街歩き実験を通して,旅行者へ街歩き中の体験を誘発することによって街歩きの内容がどのように変化するか,そして,それが思い出形成にどのような影響を与えるかを検証する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は,調査目的での旅費の支出が予定を下回ったことと,一部の設備備品(計算機等)の購入を延期ことにより,研究費に一部未使用額が発生している.次年度は,この研究費未使用額を,購入を延期していた備品の購入に使用する.また,システムの本格的な実装を開始する計画であり,デバイス実装用の工作材料,データベース構築用の計算機,ソフトウェア等に研究費を使用する予定である.また,一部研究成果については,国内外の学会・会議にて発表を行なう予定であり,その際の旅費を支出する.さらに,街歩き実験に対する追跡アンケート調査実施に伴う,被験者謝金の支出も予定している.
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