2011 Fiscal Year Research-status Report
人間の感覚量と物理量を考慮した建築のエイジングに関する研究
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23700250
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
渋谷 達郎 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助手 (70567586)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | サステナブル建築 / エイジング / 建築外観 / 汚れ感 / 印象評価 / VR |
Research Abstract |
本研究は、時間の経過に伴う変化「エイジング」について、長期間にわたって魅力が持続するような建築や経年変化によって魅力が増すような建築を「エイジング建築」と定義し、人々がどのような部分に魅力を感じるのか、また、その魅力がどのようなメカニズムで生成されるのか、人間による感覚的評価と工学的処理による特徴抽出を併用し、その感覚量と物理量との関係性を明らかにするものである。初年度は、人間による感覚的評価に関して、対象を大学キャンパスとし、エイジング建築の事例調査を文献および現地にて行った。大学キャンパスは、公共性が高く、広大な敷地、多くの建築物から成るため、建築単体の造形や配色、配置と同時に、建築群としての景観を形成しており、大学全体をひとつの街としてとらえることもできる。また、近年では、老朽化した校舎の建替えや耐震改修などの問題を抱えているケースが少なくない、また、社会的ニーズとして、大学の地域開放なども求められており、ケーススタディとして取り上げた。具体的には、DOCOMOMO100選およびJIA25年賞に該当する国内の大学キャンパスから、実地踏査可能な20事例を抽出し、外観写真、竣工年、規模、構造、用途、設計者、施工者を取りまとめたデータベースを作成した。次に、データベースに使用した建築事例の代表的なファサードについて、SD法を用いたアンケート調査により、印象評価を行った。評価結果をもとに、建築外観の印象に関する3つの因子を抽出した。次に、これらの評価因子を用いて、「好ましさ」と「汚れ感」との関係性を分析し、大学キャンパスにおける建築のエイジング要素について考察した。これらの成果は、「大学キャンパスにおける建築のエイジングに関する研究 -建築の外観がもたらす印象とその汚れ感の分析‐」と題して、2011年度日本建築学会大会学術講演会(早稲田大学)にて発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、ケーススタディとして大学キャンパスを対象に、1.エイジング建築の事例調査、2.エイジング建築のデータベース作成を行っている。事例調査では、調査対象として、価値が既に認められている重要文化財のような歴史的・伝統的な建築物ではなく、現存する近代建築および現代建築としている。これは、今後のストック型社会において、保存よりも既往建築の利活用を前提とした、より実際に即した研究とするためである。具体的には、「DOCOMOMO100選」や「JIA25年賞」に選定された建築物のうち、実地踏査可能な20事例を抽出し、文献調査および現地調査を行っている。データベースの作成では、文献調査および現地での実地踏査を元に、外観写真、竣工年、規模、構造、用途、設計者、施工者を取りまとめたデータベースを作成している。データベースに使用した建築事例の代表的なファサードについて、SD法を用いたアンケート調査により、建築のエイジングに関して印象評価を行い、建築外観の印象に関する(1)情緒性因子、(2)生活の質因子、(3)構築度因子の3つの因子を抽出した。次に、これらの評価因子を用いて、「好ましさ」と「汚れ感」との関係性を分析し、大学キャンパスにおける建築のエイジング要素について考察している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、前年度の人間による感覚的評価に引き続き、工学的処理による特徴抽出に関して、1.VR(バーチャルリアリティ)システムによる建築物の経年変化シミュレーション、2.建築物の物理的構成要素との関係分析に取組む予定である。地球環境問題を考えるうえで環境志向へのライフスタイルの転換は喫緊の課題であり、本研究では、長く使ってもらえるような建築デザイン(建築の持続可能性)に応用していくための基礎的知見を得ること、望ましいエイジング建築の将来像を提言することを目的としている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3月11日に発生した東日本大震災の影響で、当初予定していた現地調査の対象地域を変更したため、当該繰越の研究費が発生した。一方、事例数については、当初の予定数を確保しており、分析に支障はなかった。今年度は、VRの構築およびシミュレーションが中心となるが、併せて、現地調査も行う予定である。
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