2012 Fiscal Year Research-status Report
感情情報を含んだオノマトペデータベースの構築に関する研究
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23700256
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
内田 ゆず 青山学院大学, 理工学部, 助教 (80583575)
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Keywords | 日本語オノマトペ / 感情分析 |
Research Abstract |
当該年度においては、オノマトペを感情の観点から分類することに重点を置いた。 具体的には、複数の評価者に324語のオノマトペをPlutchikの基本感情8種に基づいて分類させ、評価者間の意見の一致を定量的に調査した。さらに、意見の不一致が起こる原因を分析し、評価の手順を改善することで評価者間の一致度を向上させた。その結果、290語のオノマトペが8種の感情カテゴリに分類された。また、因子分析を用いた他手法との比較を行ったところ、ほぼ同様の分類であったことが明らかになり、本手法の妥当性が示された。日本語母語話者が回答するアンケート調査に基づく手法で分類を行うため、統計的な手法では得られない実態に即した分類が得られた。 オノマトペは使用されるドメインによって大きく意味が異なるため、オノマトペ-ドメイン間の関係性を明らかにすることも重要な課題である。そこで、ショッピングレビュー文におけるオノマトペの分析を行った。 具体的には、Yahoo!ショッピング商品レビュー729,865件を対象として、1,049語オノマトペの出現頻度を調査し、"やわらかい"、"かわいた"を表現するオノマトペの出現頻度を変数としたクラスター分析によって商品カテゴリを類型化した。その結果、日本語母語話者にとって、直感的に違和感のないデンドログラムが得られ、商品カテゴリによって使用されるオノマトペに一定の傾向があることを実証した。 これらの成果は、日本語学習者への支援(日本語教育)や、対話分析、評判情報抽出(自然言語処理)、言語学や認知科学などの幅広い分野に応用可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、オノマトペに含まれる書き手の感情を周辺文脈から判定する手法を考案する予定であった。しかし、オノマトペは使用されるドメインによって大きく意味が異なるため、オノマトペ-ドメイン間の関係性を明らかにすることが先決すべき課題であると考え、商品レビュー文を対象としたオノマトペと商品カテゴリの関係についての分析を行った。 具体的には、Yahoo!ショッピング商品レビュー729,865件を対象として、1,049語オノマトペの出現頻度を調査し、"やわらかい"、"かわいた"を表現するオノマトペの出現頻度を変数としたクラスター分析によって商品カテゴリを類型化した。その結果、日本語母語話者にとって、直感的に違和感のないデンドログラムが得られ、商品カテゴリによって使用されるオノマトペに一定の傾向があることを実証した。 このように、計画とはやや異なる方向性で研究を進めることとなったが、一定の成果を上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに継続的に行ってきた日本語オノマトペについての研究の中で、オノマトペは日本語のコミュニケーションにおいて感情を表現する重要な要素であるが、言語表現だけでは説明しきれない部分もあることが明らかになった。したがって、「オノマトペに含まれる話し手の感情」というこれまでにない新しい要素を考慮した大規模なオノマトペデータベース構築に、漫画を言語資源として挑戦する。 具体的には、人手により日本語の漫画で用いられるオノマトペの情報にタグ付けを行い、信頼性の高いデータベースを構築する。この際、複数の作業者によるタグが一定の一致率を保つように、EDR電子化辞書の概念識別子および関係子に基づいたタグ設計を行う。なお、必要に応じて、一致率を担保するためのタグ付支援システムの構築も視野に入れている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に購入予定であった、アンケート用紙を印刷するための高速カラープリンタ、アンケート調査の際に使用するノート型パーソナルコンピュータ各1台は既存のもので代用が可能であったため、本助成金での購入を見送った。 また、当初の計画では、本研究課題で構築したオノマトペデータベースの教育資源としての有効性を平成24年度に評価する予定であった。しかし、十分な数の被験者(適切なレベルの日本語能力をもつ日本語学習者)からのデータを収集するには至らなかったため、計画を変更しショッピングレビュー文におけるオノマトペの分析を行った。 この研究成果は平成24年度の終盤に得られたが、年度内の学会等で発表することが日程の都合上困難である。したがって、平成24年度終盤に得られた研究成果の発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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Research Products
(8 results)