2011 Fiscal Year Research-status Report
システムと利用者の役割分担を動的に変更できる協調型最適化方式の開発
Project/Area Number |
23700272
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
小野 智司 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (90363605)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 人工知能 / 進化計算 / ユーザとシステムの協調 / 対話型進化計算 |
Research Abstract |
本研究では,住宅設計問題,製品デザイン,旅行計画などのように,暗黙で曖昧な嗜好と明確な最適化指標との双方をもとに最適化を行う問題において,システムと利用者が協調して最適化を行う方式を開発する.本年度は,下記について研究を行った.1) 提案する協調型最適化方式の設計: システムと利用者の様々な役割分担の動的な調整を許すように本方式を設計した. システムの開発者が,選択的に機能を実装できるよう,問題のモデル化,進化計算アルゴリズム,分散並列計算モデルの各要素について問題に応じた適切なモジュールを選択できるよう考慮した. また,システムの利用者が協調のスタイルを動的に調整できるよう,探索制御,解候補の提示,評価,編集,利用者の嗜好の推定の各項目について検討を行った.2) 協調型最適化ミドルウェアの開発: 1) の設計に基づき,協調型最適化システムの実装を助けるミドルウェアの実装を開始した.本ミドルウェアは,ユーザインタフェース,進化計算部,利用者の嗜好度推定部,操作記録部から構成される.進化計算部は分散並列化を省力化するライブラリJSGridを利用しており,クラスタ環境を容易に構築できる.3) 4種類の問題における協調型最適化システムの開発: 計算機が解候補の評価に要する時間の短長,および,人間顔解候補の評価に要する時間の短長に基づいて問題を4種のクラスに分割した.4種のクラスのうち,3種のクラスに属する問題について,検証用のシステムを実装した.2)の協調型最適化ミドルウェアを利用することで実装の労力を省力化することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本方式の最終目的は下記の3点である. A) 本研究では,協調スタイルを変更することで最適化の役割分担を利用者とシステムの間で動的に調整する協調型最適化方式を提案し,ミドルウェアとして実装を行った上で公開する.B) また,人間および計算機が解候補の評価に要する時間に着目して問題を分類し,4種類の問題において,協調方式の効果的な推移の検討を行う. C) 上記ミドルウェアを用いた協調型最適化システム開発の指針の策定を試みる.A)についてはミドルウェアの実装に着手し,必要な機能の実装等を行っている.公開に向けて,引き続き実装を行う.B)については前倒しで開発をすすめ,4種類の問題クラスのうち3種において検証用のシステムを実装した. 特に静止画像生成問題について被験者実験を行い,提案する方式を用い,システムとユーザが協調して問題解決を行うことで効率化が図れることを示した. この研究成果は情報処理学会論文誌数理モデル化と応用に採録され,掲載予定である. また,情報処理学会数理モデル化と問題解決研究会においてプレゼンテーション賞を,情報処理学会火の国情報シンポジウムにおいて講演賞を,日本感性工学会生命ソフトウェアシンポジウムにおいて優秀発表を受賞した.文章生成問題を対象とした研究でも同様に被験者実験を行ったところ,提案する方式が,特に,探索序盤の大域的な探索を効率的に行えることを確認した.この成果は,進化計算に関する査読付の国際会議GECCO 2012に採択された.ネットワーク生成問題を対象とした研究の成果は,査読付のオンライン国際会議WSC16に採択された.C)については平成24年度以降に行う.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,下記の2点について取り組む. 4) 4種類の問題における協調型最適化システムの開発(平成23年度より継続):計算機が解候補の評価に長い時間を要する問題を対象としてシステムを開発する.既に前倒しで開発を進めているため,平成24年度に実装するシステムは,4種類の問題クラスのうち,未着手である動画像生成問題を対象とした検証システムとなる. 実装を行い,被験者実験を通じて,提案する方式の有効性を検証する.5) 各問題における実験的検討およびシステム開発指針の策定: 被験者の操作記録や実験の様子を撮影したビデオ画像をもとに,利用者とシステムの協調方式がどのように選択,変更されるかを調べる.また,解候補の提示方法,利用者の介入のタイミング,利用者による解候補評価や操作の最適化への影響などを解析する.各問題を対象とした実験を総合的に解析し,協調型最適化システム開発の指針を定めるとともに,問題の特性と役割分担の推移の関連を解析する.また,視線計測装置等を用いて被験者の挙動の観測を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は,被験者実験で使用する実験用端末,進化計算部で使用する評価用計算機クラスタ等を中心に,システムの実装および評価実験に必要な機器の購入を行った. 参加を予定していた国際会議(GECCO2011)に投稿していた論文が不採択となったため,また,システムの実装を優先し,評価実験の一部を平成24年度に持ち越したたため,次年度に使用する額が発生した.平成24年度は,主に研究成果の発表,論文掲載料,実験補助の謝礼等に使用する. 平成24年度は国際会議(GECCO2012)に投稿した論文が採択となったため,旅費を計上する.その他,進化計算学会研究会および進化計算シンポジウムなど,国内で開催される学会に参加する.
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