2011 Fiscal Year Research-status Report
図書館利用記録の秘密性(confidentiality)についての現代的研究
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23700285
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
高鍬 裕樹 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (40362743)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 図書館情報学 / 国際情報交流(米国) / 利用記録 / プライバシー |
Research Abstract |
本研究課題「図書館記録の秘密性(confidentiality)についての現代的研究」について、研究計画に従い「図書館におけるプライヴァシーと秘密性に関する歴史的研究」を主に行った。これは本研究課題の前提として設定したものであり、図書館情報学の領域で利用記録の秘密性がどのように認識されてきたのかについて把握するためのものである。具体的には、図書館思想の先進国であり利用記録の秘密性に関してもすでに研究の蓄積のある米国の図書館情報学の先行業績を網羅的に収集し検討することで、利用者のプライヴァシーを守ることに関して、エドウィン・ベーカーの「自由理論」が暗黙のうちに適用されていることを見いだした。このことは、図書館の利用記録の秘密性が、単に図書館の問題にとどまらず、知的探求を行う場合の支援となるすべての機関についても同様にあてはまることを意味する。リチャーズはこれを「知的プライヴァシー」と呼んでいるが、これは情報を受け取る権利や通信の秘密など、新しい思想や理念を生み出す知的活動を保護するための方策と考えられるという意味で、より包括的な概念である。図書館の利用記録の秘密性を保護することは、この「知的プライヴァシー」の保護を行う活動の一環であることを明らかにした。一方で、図書館の利用記録を活用してよりよいサービスを行おうとする主張があることも事実である。本年度ではこのような主張にたいしての文献研究を行い、技術的な実現可能性には問題がないこと、しかしながらそれを行う際に上記の「知的プライヴァシー」にたいする配慮が行われているとは思えないことを明らかにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
図書館におけるプライヴァシーと秘密性に関する歴史的研究については、計画通りその源泉と歴史的経緯を確認している。また、図書館情報学以外(主として法学・社会学)の文献を検討することで、図書館利用記録の秘密性の前提となる21世紀に入ってからのプライヴァシー観の変容などを把握し、新しい理論を構築するための準備作業をおおむね終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、(1)「図書館におけるプライヴァシーと秘密性に関する歴史的研究」の完成度を高めるための研究活動を行い、(2)「旧来のパラダイムの崩壊とプライヴァシーや秘密性に関する新たな理論の構築」について検討を行う。なお平成23年度分の研究費に約30万円の残額が出たが、これは海外研究者との情報交流に予定していた費用が、事情により渡航を中止したため出たものである。この残額分については、平成24年度に行う海外研究者との情報交流および研究会の開催費用に充てる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「図書館におけるプライヴァシーと秘密性に関する歴史的研究」をさらに再検討し完成度を高めるために、文献(プライヴァシーに関する国内外の専門書)を収集し考察を深める。「旧来のパラダイムの崩壊とプライヴァシーや秘密性に関する新たな理論の構築」を行うために、文献を収集し、かつ海外の研究者との情報交流を行う。次年度の夏には本プロジェクトに関する公開セミナーを行うとともに、同じ夏期には資料収集・情報収集のためにアメリカに調査に行く。それを受けて、この2年間の本プロジェクトの全体的なまとめを行い、成果を口頭発表、学会誌等の印刷体、ウェブ上に公表する予定である。研究費はこれらのセミナー、発表等の費用にも充てる。
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Research Products
(2 results)