2012 Fiscal Year Research-status Report
患者会面接調査による、レイ・エキスパートの概念とその医療情報取得・探索過程の解明
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23700287
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
國本 千裕 駿河台大学, 人文社会・教育科学系, 講師 (10599129)
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Keywords | 図書館情報学 / レイ・エキスパート / 情報探索行動 / 医療情報 / 実践知 / 患者会 / 半構造化インタビュー / lay-expert |
Research Abstract |
1 インタビュー調査(継続) 医学の専門教育を受けた経験が無く、医学に関しては全くの素人である、3患者団体の代表者3名(いずれも患者もしくはその家族)を対象に、各々4~6時間の半構造化インタビューを実施した。今年度は、調査対象者が闘病経験を通じて実践的に獲得した、医学・医療に関する「知識」や「スキル」に注目し、その具体的な内容と特徴についてより詳細に分析を行った。 2 「レイ・エキスパート」概念の再整理(文献調査) 図書館情報学以外の研究分野(例:科学社会学、医療社会学、消費者健康情報学等)の既存研究において、(1)「レイ・エキスパート」に類似する概念は存在するか、(2)各分野において素人の有する「知識」をどのように扱ってきたか、以上2点を明らかにするため、網羅的な文献調査を実施した。その結果、各分野とも「素人(lay-person)」、「患者としての熟達者(patients as expert)」、「熟達者(expert)」といった「レイ・エキスパート」に類する概念を有していたものの、その定義や位置づけ、知識への着目の仕方は、大幅に異なっていることが明らかとなった。 3 「レイ・エキスパート」の有する知識 今後は、1の継続分析で明らかになりつつある、国内の「レイ・エキスパート」候補が有していた知識の特徴に関して、さらなる分析を進める。2の文献調査の成果もふまえながら、1で示した知識モデルの精緻化を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的1:「レイ・エキスパート」が形成されるプロセスの解明 平成23年度から引き続き実施している、インタビュー調査の分析結果から、国内に「レイ・エキスパート候補者」が存在することの確認は完了した。さらに、その発言内容の詳細分析により、研究目的の1項目「レイ・エキスパートが形成されるプロセスの解明」の前段階、すなわち、専門教育を受けた経験のない「素人」が、医学・医療に関する専門的な知識・スキルに徐々に習熟(エキスパート化)していくプロセスの事例的な解明も達成しつつある。 研究目的2:「レイ・エキスパート」概念の再検討 上記の達成をふまえて、平成24年度は、研究目的の第2項目「レイ・エキスパート概念の再検討」に取り掛かった。前段階となる「レイ・エキスパートの知識モデル」の構築にも取り組み、後者に関してはおおむね目的を達成した。「レイ・エキスパート概念」の再検討にあたっては、昨年度の調査結果から「レイ・エキスパート」の位置づけをより広い文脈から、他分野での類似した概念も整理したうえで捉えなおし、概念的な整理を行うことが必要と判断した。これを踏まえて、今年度は図書館・情報学(情報探索行動研究)以外の、複数の研究分野に跨る、網羅的な文献調査を実施した。結果、専門家では得られない“素人独自の知識(素人知)”とその構築プロセスへの着目という、新たなアプローチを得て、当初の予定よりも発展した形での「概念整理」が可能となりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
①「レイ・エキスパート」の知識モデルの提示(成果報告) 平成24年度に実施したインタビューの再分析と、網羅的な文献調査の後、その結果をふまえて、国内の「レイ・エキスパート候補」が有する素人知についての、基礎的な「知識モデル」を提案することとした。なお、本成果は、平成25年度前期の早い時期に原著論文にまとめ、査読誌『Library Information Science』への投稿すことを目指して執筆中である。 ②構築した知識モデルの精査(発展調査) 提示した「レイ・エキスパート」の知識モデルをさらに精緻化するため、前年度とは異なる2団体、計10名に対して、各2時間半程度のインタビューを実施する必要が生じた。前年度、調査の随所で示唆された“素人による専門知識や医学論文の探索・利用の可能性”を探るため、患者会の構成員(素人)を対象に、彼らが、1)実際に利用した経験のある(もしくは利用を希望する)医学学術論文とはどのようなものか、2)現状では入手困難とされる医学学術論文を利用する(もしくは利用を希望する)理由と動機は何か、を探っていく。本成果は、元医学図書館員の研究者とともに調査を実施し、平成25年度秋季に行われる、第61回日本図書館情報学会研究大会において成果を公表する予定である。本発展調査の成果は『日本図書館情報学会誌』への原著論文投稿を目指す。 ③「レイ・エキスパート」の知識モデルと知識形成プロセスの精査 調査②の内容分析を適宜実施し、その成果を①の結果と組み合わせて、さらなる発展的な課題である“素人独自の知識(素人知)”の構築プロセスを解明するための示唆を得たい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
インタビュー謝金:5千円@2h×10名=10万 旅費1:横浜~福岡天神(往復)=7万5千円 旅費2:横浜~大阪天王寺(往復)=2万5千円 質的分析ソフト:Nvivo10日本語版教育用=12万円 パソコン:Panasonic Let's Note CFX2BEMBP(Corei7-3687U/SSD128GB)=27万円
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Research Products
(1 results)