2013 Fiscal Year Annual Research Report
患者会面接調査による、レイ・エキスパートの概念とその医療情報取得・探索過程の解明
Project/Area Number |
23700287
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
國本 千裕 駿河台大学, 人文社会・教育科学系, 講師 (10599129)
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Keywords | 図書館情報学 / レイ・エキスパート / lay-expert / 患者の知 / 実践知 / 患者会 / 情報探索行動 / 医療情報 |
Research Abstract |
本研究の目的は、A)レイ・エキスパート概念の再検討、B)日本国内におけるレイ・エキスパートの習熟プロセスの解明、の2点である。体系的な医学知識を有さない「素人」であるレイ・エキスパートが、医学・医療に関する専門情報をどのように取得・探索し、エキスパート化していくのか、その過程を明らかにしようと試みた。 24年度は、1)資料・ウェブを元にした患者会実態調査、2)レイ・エキスパート候補者へのプレ・インタビューを実施した。25年度は、前年の成果を元にインタビュー項目を精緻化し、3)本調査である個人インタビューの実施と、4)文献調査によるレイ・エキスパート概念の再整理を実施した。最終年度は、5)レイ・エキスパートの有する「素人知」の特徴分析、さらに、6)2008年から5年おきに実施してきた「一般人による医学・医療情報の探索状況」を探る全国規模の質問紙調査を行った。 調査の結果、日本国内には確かに「レイ・エキスパート」と呼びうる“患者としての熟達者”が存在すること、そしてその多くは、a.医師やインターネットのみならず学術論文のような専門的な情報源を通じて「医学・医療に関する専門知識」を得ていること、b.闘病・看護経験から得た「患者としての熟達知」も活用したうえで、c.それらの知識を文脈に応じて使いこなす「独自の知識」を獲得している可能性が示唆された。最終年度に実施した全国調査の結果からは、5年前と同様、医学論文の利用に積極的な一般人が、一定数存在すると同時に、情報源として医師よりインターネットを優先する者の割合が増加するなど、素人による医学・医療情報の自発的な探索が進む傾向が明らかとなった。オープンアクセスによって、一般人も専門情報を活用可能となりつつある現在、素人でありながら、専門知識を獲得し、活用する「レイ・エキスパート」の情報利用に関して、さらに詳細な分析が求められる。
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