2011 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ公共図書館の発達停滞にみるアウトリーチサービス発展条件に関する実証的研究
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23700290
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Research Institution | Ibaraki Women's Junior College |
Principal Investigator |
中山 愛理 茨城女子短期大学, その他部局等, 講師 (80435239)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アメリカ合衆国 / 公共図書館 |
Research Abstract |
本研究では、アメリカ南部地域の公共図書館におけるアウトリーチサービスの遅滞していた事例を史料から調査し、その成功を阻害した要因を分析するために、国内で入手可能な文献を入手し、整理した。そのうえで、アメリカ図書館協会図書館エクステンション委員会がアメリカ南部の黒人に対するサービス促進に向けた取り組みとどのようにかかわり、捉えていたのかを明らかにするため、アメリカ図書館協会アーカイブズ等に基づき、分析した。その結果、ALA図書館エクステンション委員会は南部のいくつかの州で、黒人の利用可能な巡回文庫が存在したことを把握していたことが判明した。また1929年Library service to negroという小冊子を作成し、配布していたことなどの取り組みが確認された。これらの取り組みから、ALA図書館エクステンション委員会は図書館エクステンションの一部に黒人に対するサービスを位置づけていたことが明かになった。 しかし、ALA図書館エクステンション委員会は自らが主体的に方針を立案し、それに基づき活動を推進していなかった。ALA図書館エクステンション委員会の活動は、現状を把握し、発信することに限られていたといえる。ALA図書館エクステンション委員会の活動は黒人に対する図書館サービスが、南部の問題に限らないことを認識しながら、具体的に改善に向けた方針を示し、黒人に対するサービスの発展に寄与したとはいえない。寄与できなかったのは、図書館エクステンション委員会による活動資金の確保に苦労し、主体的な活動を行うまで至らなかった背景があった。その状況から、アメリカ南部の公共図書館のサービスに対する取り組みの成功を阻害した要因のひとつに、サービスを運営する資金の不足が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災による本務校に大規模な被害が生じ、授業期間が変更されたため、予定していたアメリカへの調査をおこなうことができなかったため、達成度はやや遅れている。だが、国内で入手できる資料等により、事前調査を行い、それに基づく成果を学会報告することで、一定の研究成果をあげた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に予定していた南部の図書館における図書館アウトリーチサービスに関する文書史料を平成24年度前半で、南部の州立図書館及びアーカイブズ並びに大学アーカイブズを訪問し調査収集する。訪問する地域は、ジョージア州などのデープサウスと呼ばれる南部の特徴を最も表すとされる地域を念頭に選定をする。 平成24年度の後半には、アメリカで収集した史料の整理として、後の分析がスムーズとなるように複写した文献は、適宜ファイルなどに整理する。また、デジタルカメラで撮影した史料は、必要に応じて紙に出力して整理する。また、資料の収集として、日本国内で入手可能な関連資料については、継続的に行い、渡米して入手した資料の分析にす。それとともに、渡米して入手した史料の読み込みを行い、内容を分析し、アウトリーチサービスの阻害された要因を分析する。 これらの研究成果の発表・報告を学会および論文等の手段でおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に生じた未執行額は、アメリカへの調査旅費に相当するものである。平成24年度には、アメリカへの調査を行い旅費を執行する。また、現地での複写費用や複写した資料を整理するためのファイルなどにも使用する。 そのほか、アメリカの調査に基づく、研究成果を学会発表・報告するためにも、旅費を支出する。
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