2011 Fiscal Year Research-status Report
日本におけるアマチュアのコンテンツ制作文化の社会的機能に関する調査研究
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23700296
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
七邊 信重 東京工業大学, エージェントベース社会システム科学研究センター, 特任講師 (80431774)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | コンテンツ / ライトノベル / ノベルゲーム / 文化生産論 / ブルデュー / 文化社会学 / 産業論 / 下位文化 |
Research Abstract |
平成23年度は主として、アマチュアのライトノベル(青少年向きの小説)とPCノベルゲーム(読み進めるタイプのゲーム)を中心とするコンテンツ制作者と、彼らと産業を媒介するゲートキーパーとしての役割を持つ編集者・流通業者について、それらの業務・価値観・規範・技能・人脈などをインタビュー・文献調査を中心に明らかにすることを試みた。収集データの分析には、フランスの社会学者、P.ブルデューの文化・経済社会学に関する諸概念(界、資本、賭金、利害、戦略など)を用いた。 平成23年度以前から行っている調査やその分析結果とも総合し、次のことを明らかにした(分析結果は学会大会・学会誌で発表)。(1) 制作者の制作動機が、制作自体の楽しさや評価のような非経済的インセンティブであること。(2) 制作における協力や評価をめぐる競争といった相互作用を通じて動機づけや人材育成が達成されていること。(3) 編集者や流通業者の知識・信用・人脈や、資金力や販売力が、市場におけるシェア獲得戦略を条件づけていること。 これらの結果は、アマチュアのコンテンツ創作における相互作用を通じた動機づけ・人材育成のメカニズムを理解し、非経済的論理で成立しているアマチュアの下位文化世界を支援する制度を構築することが、日本のコンテンツ産業の一層の発展のために不可欠であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロを含む、ライトノベル、ノベルゲーム、マンガなどのコンテンツ制作者10名、関係者4名へのインタビュー調査と文献調査を実施し、コンテンツ制作本の収集を行っている。インタビュー調査の進捗はおおむね順調であり、別の制作者・関係者への聞き取り調査の確約も取っており、今年度も引き続きデータ収集を行う。また、データ分析結果について、日本社会学会、社会・経済システム学会、日本デジタルゲーム学会、コンテンツ文化史学会、East Asia Popular Culture Association 2011 Inaugural Conferenceなど、国内外の学会大会・研究会・学会誌で発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、前年度の調査を継続するとともに、申請書の研究計画に基づき、それらを補完する下記の調査を行う。(1)大学、専門学校でのアンケート調査、(2)ウェブ文化調査、(3)海外のコンテンツ創作文化調査。(1)について、自主的なコンテンツ制作の規模・教育効果測定のため、複数大学・専門学校でアンケート調査を実施する。(2)について、pixivやニコニコ動画のようなソーシャルメディア上での人材育成機能と産業との連関を調査する。(3)について、欧米、アジアの現状との比較を実施する。韓国、台湾、タイなどにおけるコンテンツ自主創作文化の実態調査と、日本との比較を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
来年度の研究費は80万円である。この使用計画はおおむね次のとおりである。(1) 物品費(20万円)…アマチュア制作ノベル、ゲーム、制作マニュアル本、分析用ソフトなどの購入。(2) 旅費(40万円)…国内、海外への調査と学会大会での発表。(3) 謝金等(10万円)…計量データの整理、インタビュイーへの謝金。(4) その他(10万円)…学会参加費、国際会議参加費など。
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