2011 Fiscal Year Research-status Report
マーク・トウェインの主要旅行記5作のデータベース化
Project/Area Number |
23700304
|
Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
浜本 隆三 徳島文理大学, 保健福祉学部, 講師 (00583311)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | マーク・トウェイン / 19世紀米文学 / 旅行記 / データベース |
Research Abstract |
本研究の目的はマーク・トウェインの旅行記5作、The Innocents Abroad(1869), Roughing It(1872), A Tramp Abroad(1880),Life on the Mississippi(1883), Following the Equator(1897)のデータベース作成にある。研究の重要性は、トピックおよびキーワードの整理・分類を行い、旅行記5作の横断的なデータベースを作成することで、旅行記の資料的価値を高め、旅行記研究の促進を図る点にあった。とりわけ、本研究の特異性は旅行記を構成する「観察」と「内省」を重視し、両者を軸にした旅行記の内容の整理・分類を行う点にあった。 平成23年度の研究目標は、同5作が書かれた19世紀の旅行記を俯瞰しながら、トウェインの旅行記に描かれた「観察」と「内省」について考察したうえで、トピックとキーワードを選定し、データベース化の方法を検討する点にあった。 現在までの研究成果として、本研究のもっとも重要な点と位置付けている「観察」と「内省」について明らかにすることができた。さらに、The Innocents Abroad(1869)について、その内容の分析に取り掛かり、付随して発見した内容について論文としてまとめた。 具体的な成果の内容については、次項【現在までの達成度】において述べる。 データベース化の方法については、所属している研究会「関西Mark Twainの会」と検討のうえ熟考した結果、本研究が同研究会と相談を重ねて達成される研究成果であること、また、内容の再検討やその反映を迅速に行うことができること、等の理由を勘案し、同研究会のホームページを活用する方向で検討している。データベースのシステムについては、現在、サポートを依頼している大学院生とディスカッションを重ねている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度の研究目標と達成度は、(1)19世紀の旅行記を俯瞰する点(100%)、(2)「観察」と「内省」について考察する点(100%)、(3)トピックとキーワードを選定する点(20%)、(4)データベース化の方法を検討する点(90%)である。進捗状況を「やや遅れている」とした理由は、(3)による。本年度夏季までに挽回を図る。 具体的な研究成果として、(1)『徳島文理大学研究紀要 第83号』において掲載された論文「旅する"Average American"の誕生:19世紀旅行記文学とMark Twain旅行記の特質」によって19世紀の旅行記を俯瞰し、トウェインの旅行記の特質が彼の特異な観察眼にある点を明らかにした。(2)『徳島文理大学研究紀要 第84号』において掲載された論文「Mark Twainの観察眼と晩年のペシミズム」によって旅行記執筆に欠かすことの出来ない観察眼を、トウェインの哲学的・思想的文脈の中から考察し、観察眼と内省の関係について明らかにした。(3)『関西マーク・トウェイン研究 第3号』において掲載された論文「Laugh! But Solemnly: The Humor and Death in The Innocents Abroad」において、トピックとキーワードの選定作業に際して付随的に発見した内容を論文としてまとめた。 さらに、(4)に関係した研究発表として平成23年11月に開催された関西マーク・トウェインの会の第175回例会において、「エピソードと内省:Mark Twainの連想形式と帰納法」と題した研究発表を行った。また、同研究会の月例例会に各回出席し、非公式な形ではあるが研究内容について屈託ない意見と批判を仰いだ。 データベース作成にあたっては、同志社大学大学院博士課程院生の藤田透氏に技術的な検討を依頼し、平成24年3月、4月に上記研究会と日程を重ねて相談をおこなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の当初の研究計画は、(1)旅行記5作の分析作業、(2)データベースの作成、であった。この二点に、平成23年度に未達成の(3)トピックおよびキーワードの選定作業(残り80%)、および、(4)データベース化の方法の検討(残り20%)が加わる。 取り掛かる順序としては、(3)と(4)を同時並行で行い、(3)に関しては夏を目途に、(4)に関しては(1)が達成される時点を目途に終え、そのうえで(2)に取り掛かる流れとなる。研究の達成は(3)のトピックおよびキーワードの選定にかかっているが、この段階を達成すると、残りは作業的に進めることができるため、当初の研究計画を完遂することは十分に可能である。 (3)の遅れを挽回する対策として、当初の予定では5作の精読を通して帰納的にキーワードを選定する予定であったが、トピックとキーワードの選定を別々に行い、段階的に分析することで時間の短縮を図ることにした。この方法をとると、全体的なトピックの把握が行えているために、精読ほどの労力を必要とせず、時間の節約が可能となる見込みである。 (4)に関しては、研究完遂後もさらにデータベースの内容を発展させていくことを目指し、また、本研究が関西Mark Twainの会からの多大な知的援助を享受して行われているため、その成果を同研究会のホームページを通して社会に還元していくことを検討している。したがって、当初予定していた米研究機関との技術的な折衝を行う手間が省け、データベース構築に関しては比較的融通と自由を利かせられる状況になるといえる。 その反面、データベース構築をゼロベースで行うことになり、その作業は共同研究者のない本研究において一人で行うには膨大な労力を要することになる。そのため、技術的な面や作業に関してはインターネット上の作業およびデータベース作成の経験と実績が豊富な大学院生に依頼する方向で検討している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究計画は、(1)旅行記5作の分析作業、(2)データベースの作成、(3)トピックおよびキーワードの選定作業、(4)データベース化の方法の検討(残り20%)である。配分された研究費は50万円である。 当初の研究費の使用配分は、書籍購入等に充てる物品費として15万円、旅費として35万円を請求していた。研究の進展に伴い、研究費の使用配分も再検討が必要となった。変更後の使用配分は物品費として12万円、旅費として18万円、院生のアルバイト人件費として20万円、以上の配分を予定している。 変更点の説明を含めた具体的な使用目的をよび内容は次の通りである。物品費については、研究に必要な書籍代として10万円程度、データベース構築の際に必要となる可能性のあるソフトウェアやPC関係の予備費として2万円程度を予定している。 旅費については、当初、米国のカリフォルニア大学バークリー校にあるマーク・トウェインに関する研究機関にデータベースの提供を考えていたため、同機関への旅費15万円強を見込んだ35万円を見積もっていた。より有意な形で関西マーク・トウェインの会のホームページ上でデータベースを公開する方向で検討する結果、米国への旅費分を後述の人件費に充当し、本務校から研究会への参加に必要な旅費として18万円を請求する内容に変更した。研究会は月例で開催されているため、12回×15,000円という計算である。 本年度、新たに人件費として20万円を計上するように変更を行っている。これはデータベース構築の実務的な作業を依頼する大学院生藤田透氏への謝礼として支払うためで、藤田氏が所属する同志社大学の大学院生に支払われる時間給により算出する。現在の時点では、作業時間が未定であるため、多少、余裕をもたせた金額となっている。
|