2011 Fiscal Year Research-status Report
アイロニー産出に関与する神経基盤の検討による高次意図伝達メカニズムの解明
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23700305
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
秋元 頼孝 東北大学, 加齢医学研究所, 教育研究支援者 (00555245)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アイロニー / 産出 / 動機 / 感情 / 個人特性 / MEG |
Research Abstract |
2つの質問紙実験を実施し、アイロニー産出を動機づける要因を特定した。第一の実験では、話し手の感情状態、聞き手の感情状態、聞き手の責任の各要因がアイロニー産出に影響を与えるのかどうかを検討した。その結果、ネガティブな感情とポジティブな感情の両方がアイロニー産出を増加させること、話し手の感情状態の効果が聞き手の感情状態の効果よりも影響が大きいことを明らかにした。また、アイロニー産出の頻度は、心理尺度で測定された被験者の感情調整能力と負の相関を示した。第二の実験では、聞き手との関係性が、アイロニー産出の頻度に影響を与えるのかどうかを調べた。その結果、全体としては聞き手との関係性による有意な効果は認められなかったが、心理尺度で測定された被験者の社会スキルが、聞き手に応じてアイロニー産出の頻度を変える度合いと相関を示した。以上の結果は、(1)アイロニー産出は話し手の感情的覚醒により動機づけられており、(2)話し手の感情調整能力や社会的スキルにより適切な場面での使用が調整されている、ことを示していると考えられる。 また、MEG実験による検討の可能性を踏まえ、基本的な解析の方法の確立を行った。具体的には、(1) 個人ごとにMRI構造画像と位置合わせをした後、(2)フィルタ処理により各種周波数帯域に分離し、(3)ビームフォーマーを用いてソースレベル(信号源レベル)で脳活動を再構成し、(4)時間周波数解析により機能画像を作成し、(5)これらのデータについて集団解析を行うという手順で、2nd-level解析が可能であることを確認した。この手法により、アイロニー産出処理の時間的情報を明らかにできる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していた、アイロニー発話産出に関与する神経基盤についてのfMRI実験の実施を次年度に延期したことから、(3)やや遅れていると判断した。その一方で、次年度以降に計画していた、MEG実験による検討を行うための方法の確立など先倒しで実施した部分もあるため、問題なく以降の研究計画を推進することが可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
予備心理実験により実験手続き最適化を行った後、アイロニー発話産出に関与する神経基盤についてのfMRI実験を実施する。基本的な実験デザインは、状況(深刻な状況/深刻でない状況)×発話(アイロニー/非アイロニー)の2要因計画を予定している。当初予定していた1要因計画から2要因計画に実験デザインを変更したのは、昨年度の質問紙実験の結果から、交互作用を検討できるデザインが望ましいことが分かったためである。解析では、(アイロニー条件-非アイロニー条件)、(深刻な状況条件-深刻でない状況条件)、(深刻でない状況条件-深刻な状況条件)、およびこれらの交互作用のコントラストを検討し、アイロニー発話産出に関与する脳領域を、その機能と関連付ける形で同定する。また、被験者の感情調整能力や社会的スキルについても心理尺度を用いて測定し、それに応じて活動が変化する脳領域についても検討を行う。被験者は健常な大学生・大学院生の男女それぞれ20人ずつを、友人2名一組で募集する予定である。 fMRI実験によりアイロニー発話産出に関与する脳領域を明らかにした後、同様の実験デザインを用いて、MEGによる少人数を対象とした予備実験を行う。昨年度に確立した手法を用いて解析を行い、アイロニー発話産出処理の脳メカニズムの時間的側面の検討が可能か評価する。周波数帯域としては、fMRIで測定しているBOLD信号と高い相関を示すガンマ帯域について第一に着目しているが、シータ・アルファ・ベータの各帯域についても検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、当初計画していたfMRI実験を次年度に延期することによって生じたものであり、延期したfMRI実験の被験者謝金に必要な経費として、平成24年度請求額と合わせて使用する予定である。
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