2013 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類における視覚情報の時間的統合過程に関する比較認知発達的検討
Project/Area Number |
23700312
|
Research Institution | Niigata University of International and Information Studies |
Principal Investigator |
伊村 知子 新潟国際情報大学, 情報文化学部, 講師 (00552423)
|
Keywords | 知覚発達 / 乳児 / 形態視 / 運動視 |
Research Abstract |
これまで申請者は、生後3ヶ月から12ヶ月のヒトの乳児を対象に、スリットの隙間の後ろを通過する線画の認識を調べることにより、断片的な形の情報を時空間的に統合する能力の発達について検討してきた。その結果、生後5ヶ月頃から、部分的な形の情報を統合して全体的な形を知覚することが明らかになった。 そこで、本年度は以上の成果を論文にまとめ、投稿するとともに、形と運動に関する視覚情報の統合能力の発達を調べるため、動いている物体の運動軌跡の形の知覚について検討した。生後3ヶ月から8ヶ月のヒトの乳児(実験1: 26名、実験2: 38名)を対象に、馴化-脱馴化法を用いた実験をおこなった。まず、実験1では、馴化試行において黒色の小円が円または三角形の軌跡上を等速運動する動画を呈示した後、テスト試行において円と三角形の静止画像を左右に対にして呈示した。乳児が馴化試行で運動軌跡の形を知覚しているならば、テスト試行では新奇な形の方をより長く注視すること(脱馴化)が予測される。実験の結果、全ての月齢の乳児が、三角形の軌跡に馴化した条件でのみ脱馴化を示した。三角形の軌跡に馴化した条件のみで脱馴化した原因として、三角形の軌跡の方が円の軌跡よりも頂点の数などの局所的な手がかりが用い易かった可能性が考えられる。そこで実験2では、三角形または逆三角形の運動軌跡に馴化させた後、テスト試行において三角形と逆三角形の静止画を対にして呈示することで頂点の数のような手がかりからはテスト試行の2つの図形を区別できないようにした。そのような条件でも、全ての月齢の乳児が、新奇な図形への脱馴化を示した。したがって、少なくとも生後3,4ヶ月の乳児は、動いている物体の運動軌跡の形の違いを区別する可能性が示唆された。
|