2011 Fiscal Year Research-status Report
断片的視覚情報の認知メカニズムとその神経学的基盤の解明および応用
Project/Area Number |
23700316
|
Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
姜 銀来 高知工科大学, 工学部, 助教 (70508340)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 欠損文字 / 最短距離 / 近赤外分光法 / 両側前頭葉 |
Research Abstract |
ヒトは、一部が欠けた図形や文字から元の図形や文字を推理、認知できる能力を持っている。この様な断片的視覚情報の認知は"視覚補間"と呼ばれ、脳内の視覚情報処理の重要な特徴である。本研究は、視覚補間のメカニズムを解明するため、欠損文字を断片的視覚情報とする認知における最短距離連接モデルを提案し、24人による検証実験を行った。実験では、画面上に3点か4点(ダミー)が一瞬で表示される。被験者に、表示された間に頭の中で、その3点か4点を折れ線で結ぶ。その後表示される選択肢から、自分の結び方を選んでもらう。実験結果は、次の3点に纏められる。1、被験者は、最短距離の点を先に結ぶことが分かった。しかも、3点の成す三角形の最大角の角度が大きいほど、最短距離で結ぶ傾向が強い。2、最短距離で結ぶ場合の平均反応時間は、最短距離でなく結ぶ場合より短い。3、3点の成す三角形が正三角形である場合、反応時間は長い。以上の結果から、ヒトは残された情報の間の距離を基に断片的視覚情報を認識していることが実証された。つまり、欠損文字を認知する時、脳の中では最短距離の関係にある欠損情報を結ぶことによって構築される構造と、記憶にある文字の構造との照合によって文字を認識している。また、視覚補間の神経学的基盤を解明するため、欠損文字の認知に関わる脳部位を、機能的近赤外分光装置fNIRSを用いた研究で調べた。完全な文字の認知課題と欠損文字の認知課題におけるヘモグロビン濃度を解析し、有意差のある脳部位について考察した。完全文字の認知に比べると、欠損文字の認知の場合には、両側前頭葉を中心として、酸素化ヘモグロビン濃度に有意な増加があることが分かった。それらの脳部位は、視覚認知における形状・色の認知と視覚的ワーキングメモリと記憶に基づく行動決定に重要な領野である同時に、断片的視覚情報を認知する役割もあることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
欠損文字を断片的視覚情報とする認知における最短距離連接モデルを提案し、計画通りに24人による実験で検証された。視覚補間の神経学的基盤の解明について、fNIRSを用いた研究で、両側前頭葉(Bilateral Frontal Cortices)は断片文字の認知に強く関わることが計画通りに特定された。
|
Strategy for Future Research Activity |
fMRIを用いて視覚補間の神経学的基盤を更に細かく解明する。欠損文字の認知力と加齢との相関を調べるために、タップレットPCを用いて高齢者でも簡単に操作できるヒューマンフレンドリーな計測システムを構築する。このシステムを用いて、欠損文字の認知力と加齢との相関を計測して、認知症の早期発見への応用の可能性を調べる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
fMRIによる実験の被験者への謝金、測定システム開発用PCの購入、実験データ解析のための統計解析ソフトの購入研究成果を公表するホームページの作成、論文を学会誌に発表するための別刷り代金、国内・国際学会に参加するための交通費と宿泊費
|
Research Products
(4 results)