2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23700318
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
寺澤 悠理 慶應義塾大学, 文学部, 講師 (30585790)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2012-03-31
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Keywords | 内受容感覚 / 感情 / 不安 / アレキシサイミア / fMRI |
Research Abstract |
身体内部状態の受容によって生じる感覚は内受容感覚(interoception)と呼ばれている。近年、その処理過程と神経基盤を明らかにすることによって、心と脳・身体はどのように認知活動を支えているのかを解明しようとする試みが行われている。本研究では、このような背景に基づき、認知機能の中でも重要な「信念の形成」に内受容感覚が及ぼす影響を検討し、その役割を理解することを目的とした。 本年度は第一に、個人の内受容感覚の感受性と他者の感情の理解能力の関連性を検討した。この結果、内受容感覚の感受性が強い個人においては、他者の感情を敏感に感じやすいことが示された。とくに、他者の悲しみや喜びを内受容感受性の低い個人よりも強く感じていることが示唆された。さらに、内受容感受性は個人の不安傾向の高さとも密接な関係にあることが示された。 次に、上記の結果に基づいて内受容感覚の感度と、個人の主観的感情経験の関連性を支える神経活動について、fMRIを用いた検討を実施した。内受容感覚が鋭敏であると考えられる個人では、顕在性不安傾向が高い一方で、アレキシサイミア傾向低いことが明らかになった。さらに、内受容感覚の鋭敏さは、fMRI実験中に報告された主観的な不安の強さとも相関を示した。fMRI実験の結果、自己の身体内部に注意を向けている間は両側の島皮質前部や視床が強く活動していることが確認された。この時の左扁桃体の活動と、身体に注意を向ける条件中の主観的不安評定値の高さとの間にも関連性が認められた。 本研究の結果は、内受容感覚の感受性が他者および自身がどのような感情状態にあるのか、という信念の形成において、非常に重要な役割をもっていることを示すものである。さらに、この感覚を調整を通して、感情状態に関する信念に偏りがある精神疾患に対する治療の試みの可能性を提示するものである。
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Research Products
(4 results)