2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23700319
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊澤 栄一 慶應義塾大学, 文学部, 准教授 (10433731)
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Keywords | カラス / 順位 / 島皮質 / 運動野 / 利他行動 |
Research Abstract |
平成24年度は、個体間関係の認知を明らかにすべく、1、屋外飼育施設おける観察、2、神経線維標識法を用いた神経解剖学実験を実施した。 1、屋外ケージにて飼育した2群のハシブトガラスを通年のべ180時間におよぶ観察を実施した。群れ内には線形性優劣順位が形成されること、オス間の優劣順位は利他行動である相互羽づくろいを優位オスから劣位オスに一方向的に行うことでによって維持されること、メス間の順位は不明瞭であることを確認した。1群において、秋から冬の繁殖期に、それまで2位だったオスが1位オスとの闘争に勝ち、順位の逆転が観察された。それに伴い、当該オス個体間の相互羽づくろいの方向が逆転したことから、オス間の優位から劣位への相互羽づくろいの一方向性が再確認された。 2、カラスの優劣関係認知に関わる神経回路(中隔-海馬-巣外套尾部)は、H23年度に、免疫組織化学法を用い明らかにしたため、今年度は当該部位の神経連絡を検証すべく、デキストランの注入による神経連絡標識を行った。その結果、従来報告されていない巣外套中間部の発達を見出し、それが間脳の体性感覚視床からの入力をうけ、延髄へ直接下降路をもつことを見出した。まだ少数例のため、順行・逆行標識を併用し神経連絡の詳細を明らかにする必要があるが、当該部位の機能解剖学的可能性として、哺乳類大脳の「運動野皮質」あるいは「島皮質・帯状回皮質」のいずれかの可能性が浮上した。優劣社会関係の認知と脳構造の進化における連関に関する全く新しい可能性をえた。 以上、1については論文投稿準備をしており、2については次年度以降の発展研究としたい。
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