2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23700330
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Research Institution | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
Principal Investigator |
岡田 美苗 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 感覚機能系障害研究部, 流動研究員 (40586442)
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Keywords | 認知科学 / 聴覚フィードバック / 発声制御 / 吃音 / 感覚運動制御 |
Research Abstract |
流暢な発話は、聴覚と発話に関連する神経回路と発話器官とが精緻な時間精度で円滑に連携し実現する。聴覚・発話系の神経回路は、不随意な短潜時(< 200 ms)の発声制御を含むものがモデル化されている。しかし、潜時 200 ms 以上の発声制御特性と神経機序は、方法論上の問題から未解明な点が多い。本研究では、発声の定量的分析と脳機能計測を行い、発話の流暢性の障害をもつ吃音者と健常者とのデータ比較を通じ、聴覚・発話系における発声制御の時間的特性とその神経基盤を調べた。 実験は疑似聴覚フィードバック法で行い(岡崎・森・蔡, 2010)、母音(/a/)の持続発声中の疑似聴覚フィードバックのF0を変調量100 centでステップ状に変化させた。課題によりF0変調持続時間を250ms刻みで操作した。得られた発声応答をF0系列へ変換し、主成分分析で潜時の異なる複数成分を分離した。同様のパラダイムでfMRI実験を行い、発声時の脳活動を計測した。 実験の結果、疑似聴覚フィードバックのF0変調に対し持続的な補正応答が生じ、応答潜時とピーク値に男女差および吃音の有無による差異を認めた。主成分分析の結果、寄与率5%以上の3つの主成分(潜時600 ms、300 ms、160 ms)を得た。この結果は先行研究と一致し、聴覚・発声間の誤差検出に基づく発声F0 制御に時定数の異なる複数のメカニズムが関与することを示唆した。さらに、疑似聴覚フィードバックの変調持続時間750 ms以上で一次運動野、小脳、下前頭回、被殻、右島が有意に賦活し、これらの脳部位の遅い発声制御への関与が示された。吃音男性と健常男性の比較は潜時600 msの主成分に差異を認め、吃音男性で補正応答は遷延し、関連脳部位が異なった。吃音男性では聴覚・発声間の誤差検出は機能するが、健常男性と異なる神経伝達経路が遅い発声制御に影響する可能性がある。
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