2013 Fiscal Year Research-status Report
問題解決力育成を目指す統計教育の授業運営と評価の枠組み
Project/Area Number |
23700342
|
Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
竹内 光悦 実践女子大学, 人間社会学部, 准教授 (60339596)
|
Keywords | 学習指導要領 / 数学教育 / 教材開発 / データの分析 / 資料の活用 |
Research Abstract |
当該年度は前年度に実施した調査データの入力、処理、報告を行った。調査の結果は、約 2,000 校に送付したところ 664 校からの返信があり、回収率は約34%であった。主な調査項目としては学校の基本属性や新指導要領の内容の認知、統計教育に対する必要性や達成度の意識、等である。調査の主な結果は、半数以上の学校で統計に関する授業の導入が充分とは言えず、認知度についても十分とは言い難く、内容の導入について課題が残されている状況であった。一方で分量については 6 割ほどの学校でこの程度でよいと回答があったことは、導入に関して、高い課題ではないことも分かった。時間数については関連学会等で話題に上がっていた 10 時間を満たす学校は少なく、かなり短い時間にまとめていることが分かった。なお結果は関連の学会で報告した。 また当該年度では、新しい授業形態も実験的に実施した。近年、自宅で学習し、大学などでは議論をするというこれまでの受講スタイルが逆になる「反転授業」が提唱されているが、半分の時間だけそのような内容にする「半反転授業」を展開した。実施後、その効果を実態調査によって測定を行った。調査結果としては、負担が増えることを理由にこの授業スタイルに否定的な意見を持つ受講者(被験者)もいたが、概ね今後社会に出るためには社会のニーズにあった授業法であるという意見だった。 上記以外に統計教育の実践とその事例報告の場として、スポーツデータ分析コンペティションの共催および事務局として運営を担当した。本年度から本研究に関連して、中等教育へのスポーツデータ分析を通じた問題解決力の育成を企画し、中学校・高等学校合計 3 校に参加していただき、スポーツデータを貸与し、分析を通じて、最終的に発表を行う授業を企画した。この結果は同じくセッションをオーガナイズした統計教育に関するワークショップ内で発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に引き続き、当該研究のテーマの一つである数学教育における統計内容の導入実態は、関連学会や委員会等で統計教育者や教員との情報交換や資料によると一部の学校を除き、積極的とは言い難い。導入されたあとの大学入試でも統計に関する内容が初年度は含まれない大学があることから、高等学校での導入に積極的ではない状況である。このことは昨年度末の調査結果からも認識でき、導入に関する調査研究が遅れている。このことから実態を反映した調査内容への改善や調査対象の調整を検討し始めている。今年度集計した実態調査では概ね上記の結果が得られ、その結果を関連の学会や研究会等で報告を行った。導入に積極的でないことに対する改善策については学会やワークショップ等のイベントを通じて何らかの支援や対策を検討する予定である。例えば高等学校で実際の導入事例として注目されているアクティブラーニングへの問題解決授業の導入事例の紹介、事例構築を計画している。当該年度ではその準備としてデータコンペティションを企画した。このことは次年度以降も継続し、新たな事例構築を目指している。 また簡易データ分析ツールを用いた授業実践についても、各授業回に演習を含めるなど事前準備の構築できてきた。本年度、含めるコンテンツを増やし対象授業での導入をめざす。 ここ数年で国際的にも社会的にも、データサイエンティストやビックデータなどの言葉で代表されるようにデータに基づく問題解決力への期待も急激に増している。またその習得方法も単なる統計リテラシーの修得にとどまらず、統計的に得られたデータから様々な知見を得たり、表現したりするスキルや問題を自ら発見し、それに適したデータを集め、分析し考察する統計的問題解決の育成に発展している。このことも踏まえ、高等教育における問題解決授業の標準化および最適化を本年度はまとめ、本研究の全体の報告を計画している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は本研究の最終年度であることから、関連学会(統計教育、数学教育、情報教育)での発表はもちろんのこと、それ以外にも研究成果の論文化を中心に行う予定である。ただ論文化に関しては投稿時期のこともあるため、それ以外にワークショップ等の開催等においては、学会が運営しているメーリングリストへの投稿や告知依頼、また申請者が公開しているウェブサイトや SNS 等での告知を予定している。ウェブサイトはこれまでも研究成果や発表等の実績等を掲示してきたが、必要に応じて、研究成果も公開していく予定である。 また高等学校向けの統計教育では、申請者が所属する大学にて早期に具現化を測り、準備ができ次第、事例構築を計画している。特に本研究の目的の一つである携帯端末における簡易データ分析システムにおいては、受講生の携帯端末を活用して授業展開ができるように現在準備中である。これらも次年度後期には実施できるように考えている。 中等教育においても学会や研究会等で積極的に情報交換を行い、研究を推進、また研究成果の公開を行う予定である。 加えて、早期の調査を実施するためにネット調査などの活用も視野に入れている。ネット調査は代表性に課題もあるが、生徒・学生を対象とした全国調査も実施でき、また自由回答も通常の紙媒体の調査よりも回答しやすいため、これらの活用も検討している。 これらの方策を基に最終年度である本研究を推進し、本研究のまとめを行うことを予定している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の主計画に関係する学習指導要領に記載されている数学科における統計に関する単元の学習実施時期が予想よりも遅れぎみである。本計画の目的としてもその導入への方策を提案することではあるが、その実態および課題を検証するには時期早々であるという懸念があり、実態調査等に遅れが生じている。しかしながらこれらの問題も大学入試が近づく次年度あれば大きく動くことも予測できる。 上記の理由から関連学会や実際の教育現場にて状況を確認し、調査対象者の回答時期を考慮しながら調査を実施する予定である。多少前後することが予想されるが、概ね 9 月ごろに調査を予定している。また状況のよっては調査対象の調整や調査内容の改善を計画している。また情報端末を用いたデータ分析を可能とするシステムについてもシステム自体は完成したが、コンテンツに関して十分とは言えなかった。次年度はその内容を充実させ、実際に授業で使用し、効果測定を予定している。その調査に関係する印刷費や郵送費、データ入力などの謝金等を検討している。
|