2012 Fiscal Year Research-status Report
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23700360
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Research Institution | Advanced Telecommunications Research Institute International |
Principal Investigator |
井澤 淳 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 室長代理 (20582349)
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Keywords | 運動学習 / 運動制御 / 小脳 / 自閉症 |
Research Abstract |
本研究の目的は、これまで未整理であった脳の疾患によって運動失調が表れる計算論的メカニズムを、確率最適制御理論を用いた枠組みによって、統一的に理解することを目的とする。特に健常者を対象とした運動学習実験、小脳失調及び発達障害患者を対象とした運動学習実験、および、計算論的モデルによる考察から構成される。このうち特に今年度は、小脳失調患者の運動学習データの解析とモデル化および発達障害患者の運動学習データの解析及びモデル化を通じて運動学習を理解する。昨年までの脊椎小脳変性の患者に対する実験では、運動学習が運動の予測に関する学習と運動指令の生成に関する学習(順モデルと逆モデル)から構成され、小脳疾患患者は前者に選択的に障害を持つことが明らかになった。また、自閉症の患者が運動学習をする際、視覚よりも体性感覚をより信頼して学習をしている可能性があることが示唆された。内部モデルを形成する際、様々な感覚刺激に対する個別最適な方略を採用している可能性を示唆している。 本年度は、これらの結果を踏まえ、内部モデルの確率的表現について調べた。平均値が0であるが分散が大きくかつ、その分散値が手先運動速度に比例するような外力に対する学習を続けた後、被験者がどのような力を生成しているかを調べた。外力に対する学習を行ったグループはそうでないグループを比較よりも被験者の生成する外力の分散値が大きいことがわかった。また、分散値の大きさが手先運動速度に比例していることがわかった。これは、内部モデルが確定的な表現ではなく確率的に表現されていることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年度から継続していた健常被験者の運動学習実験が進展し、データを蓄積することが出来た。また、既に出版した小脳疾患患者や自閉症、ADHD患者におけるデータの再解析と計算論モデルの作成に着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は健常者の運動学習実験のデータを蓄積することが出来た。関連する実験機材を購入したが、比較的安価で購入できたため研究費の消化が予定よりも下回った。そこで来年度は、今年度繰越額と次年度請求額を合わせて、解析用の計算機環境を整備するとともに、fMRI実験を行い、健常者の運動学習の特性とこれまで計測した脳疾疾患患者の運動学習の特性を比較する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
統計解析用ソフト一式購入予定 MRI使用料の支払いを行う
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Research Products
(5 results)