2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23700360
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Research Institution | NTT Communication Science Laboratories |
Principal Investigator |
井澤 淳 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, 人間情報研究部, リサーチスペシャリスト (20582349)
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Keywords | 運動学習 / 内部モデル / 運動のばらつき |
Research Abstract |
平成25年度はこれまでの研究結果を踏まえて健常被験者に対する運動学習実験を行った。平成24年度までの研究では、小脳疾患患者と発達障害患者の運動学習の特性を調べた。その結果、小脳疾患患者では運動学習は健常者と同程度行えたが、感覚予測に関する内部モデルの変化を伴わないことが明らかになった。一方、発達障害のうちADHD患者の運動学習では、運動学習中の運動のばらつきが健常者よりも大きいことが明らかになった。このような運動のばらつきは内部モデルの変化とどのように関係するのだろうか。 そこで、環境の内部モデルの確率的表現と運動のばらつきとの関係を調べるために、試行ごとに変化する不確実な環境に対する運動記憶の特性を調べた。そのために、干渉粘性力場の係数にノイズを含む力場環境を実現し、乱雑な力場環境における到達運動実験パラダイムを開発した。乱雑な干渉粘性力場において被験者は到達運動を繰り返した後、手先軌道を強制的に直線に挟み付けるような力場を経験させ、その時に、被験者が左右方向にどのような力を生成するのか力センサーを用いて計測した。この生成力の計測によって被検者がどのような内部モデルを脳内に形成しているかを推定出来る。その結果、経験した力場の分散にしたがって、被検者が生成する力の分散が上昇していることが明らかになった。さらに、試行ごとの生成力の時間パターンが、事前に経験した力場の時間パターンに類似していることが明らかになった。これは、学習を通じて被験者が経験した力場を特徴付けるパラメータの平均値ではなく、確率分布を脳内に形成したことを示唆している。 本実験結果より、内部モデルは脳内に確率的に表現されており、内部モデルのばらつきが運動のばらつきに影響を与えることが明らかになった。
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