2012 Fiscal Year Annual Research Report
恐怖消失を司る扁桃体の機能的神経ネットワークの解明
Project/Area Number |
23700367
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野村 洋 東京大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (10549603)
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Keywords | 記憶 / 恐怖条件づけ / 前頭前皮質 / 扁桃体 / 不安障害 / 可塑性 |
Research Abstract |
1.本研究では、恐怖の消失および消失した恐怖の復元を司る神経機構を調べた。特に、自発的に恐怖が復元する場合と、ストレスによって恐怖が復元する場合を分けて解析した。自発的な恐怖の復元の際、前辺縁皮質の活性化が上昇していた。一方、ストレスによって恐怖が復元する際は、下辺縁皮質の活性化が低下していた。前辺縁皮質は扁桃体基底外側核の活性化を介して恐怖の誘導に寄与する。下辺縁皮質は、扁桃体介在ニューロン集団を介して恐怖を抑制する。つまり、自発的な復元には恐怖誘導系の増強が関与するのに対して、ストレスによる復元には恐怖抑制系の低下が関与すると考えられる。下辺縁皮質の活性低下のメカニズムを明らかにするため、下辺縁皮質ニューロンからパッチクランプ記録を行い、内的興奮性および興奮性シナプス伝達強度を測定した。その結果、微小興奮性シナプス後電流の頻度の低下を見出した。神経伝達物質の放出の低下もしくは興奮性シナプス数の減少が考えられる。さらに、NMDA受容体アンタゴニストAPVを下辺縁皮質に投与すると、ストレスによる恐怖の復元は抑制された。この結果から、下辺縁皮質におけるNMDA受容体依存的な可塑性がストレスによる恐怖の復元に寄与すると考えられる。 2.扁桃体基底外側核は恐怖の発現にも消失にも関与する。これまでに、恐怖発現の有無に対応して、扁桃体基底外側核内の異なるニューロン集団が活性化することを明らかにしている。本研究では、異なるニューロン集団の投射先が異なるために、恐怖発現の有無が異なると考え、検証した。扁桃体中心核に逆行性トレーサーCTBを投与し、中心核に投射する扁桃体基底外側核のニューロンを標識した。その結果、恐怖を発現する際、中心核に投射するニューロンがより多く活性化することを見出した。扁桃体基底外側核は、投射先の異なるニューロン集団を介して恐怖発現を制御すると考えられる。
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Research Products
(25 results)