2012 Fiscal Year Annual Research Report
急性ストレスの分子メカニズムを海馬神経スパインを可視化して解明する
Project/Area Number |
23700369
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北條 泰嗣 東京大学, 総合文化研究科, 研究員 (20536875)
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Keywords | ストレスホルモン / 海馬 / スパイン / コルチコステロン / リン酸化カスケード |
Research Abstract |
急性ストレス濃度(1000 nM)のコルチコステロン(CORT)は、一時間で海馬スライスのCA1神経細胞スパイン(シナプス後部)を増やす。この分子メカニズムを、スパインを可視化して明らかにした。 CORTの受容体(GR)が神経シナプスにも局在することを、免疫電子顕微鏡を用いて発見した。CORTは受容体(GR)に結合したのち、Erk MAPkinase, A kinase, C kinase, PI3 kinaseの各リン酸化酵素を駆動してスパインを急性的に増加させた。 スパイン頭部直径で分類して機能別に解析し、各リン酸化酵素の作用の差も解明することに成功した。Erk MAPK,PKA, PKC, PI3K 全てのキナーゼが、CORT による、頭部の大きなlarge-headスパイン(0.5-1.0 μm)を主に増加させていた。これらはスパイン頭部直径が計算できる、数理的解析ソフトSpiso-3Dを用いて、世界で初めて可能となったものである。 これは遺伝子転写を伴わない過程であった。以上より、CORT→GR→Erk MAPK, PKA, PKC, PI3K→スパイン増加・頭部肥大の分子メカニズムを明らかにした。これは、CORTの慢性ストレス作用、CORT→GR→核移行→遺伝子転写→タンパク合成という経路とは全く異なる。 海馬自身がCORTを合成することも明らかにした。コレステロールからCORTを合成する酵素系(P450scc, 3β-HSD, P450c21, P45011β)が全て神経細胞の細胞体とシナプスに存在した。副腎摘出ラットを用いて、海馬自身が合成するCORTの定量に成功し、質量分析から7nMという値を得た。この低濃度のCORTがスパインを増加させるという、意外な結果を得た。低濃度CORTは、ストレス抑圧とは異なり、神経栄養因子の機能を持つ。
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Research Products
(7 results)