2011 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症関連遺伝子ディスク1のプライマリーシリアを介した神経新生調節機構の解明
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23700380
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
熊本 奈都子 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30467584)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | DISC1 / 統合失調症 / 神経新生 / プライマリーシリア |
Research Abstract |
本研究は、DISC1による神経細胞遊走調節機構をプライマリーシリアを介した細胞内シグナル伝達に着目して解析し、さらに統合失調症症状との関連を調べることで、統合失調症の病態解明と治療応用への足がかりとなる事を目指す。我々はレトロウイルスを用いた選択的遺伝子導入にて海馬神経幹細胞のDISC1をノックダウンし、プライマリーシリア形成不全がおこることを見いだした。また、TCF/LEF転写因子の結合配列を上流に持つβ-galレポーター遺伝子を組み込んだマウスの海馬神経幹細胞でプライマリーシリア形成不全がおこると、β-gal の発現上昇(Wnt活性亢進)がおこることもわかった。DISC1ノックダウン細胞の細胞遊走異常がプライマリーシリア形成不全とWnt活性亢進を介して起きているかどうかを確認するため、DISC1ノックダウンマウスとプライマリーシリア形成不全モデルマウス(ドミナントネガティブKif3A発現マウス)の海馬神経幹細胞にドミナントネガティブTCF4(β-カテニンに結合するが、DNA結合サイトは欠損している)を強制発現し、Wnt活性の亢進を抑制することで、細胞遊走が正常の状態に回復するか検討した。しかし、ドミナントネガティブTCF4にてWnt活性が抑制された細胞は細胞死が引き起こされてしまい、細胞遊走の変化は確認が不可能であった。これはWnt活性が完全に抑制されてしまった結果と考えられる。Wnt活性の亢進を正常の活性状態に戻すには、ドミナントネガティブTCF4ウイルスの力価を抑えるなど、条件検討が必要である。レトロウイルスにより、海馬神経幹細胞のDISC1のみをノックダウンしたマウスでPPIや空間学習能力の低下(統合失調症の中間表現形)が起こるかどうかは現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
DISC1ノックダウンマウスとプライマリーシリア形成不全マウスでのWnt活性亢進を抑え正常の活性状態に戻すための至適条件を検討する必要がでてきた。行動解析の手続き上の問題で当初の予定より、実験開始に遅れがでてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)Wnt活性抑制による回復実験 DISC1ノックダウンマウスとプライマリーシリア形成不全マウスでのWnt活性亢進を抑え正常の活性状態に戻すための至適条件を見つけ、Wnt活性が正常に戻ったときに細胞遊走異常が回復するか検討する。2)DISC1ノックダウンマウス、プライマリーシリア形成不全マウスの行動学的解析 昨年度に引き続き、レトロウイルスにより、海馬神経幹細胞のDISC1のみをノックダウンしたマウスでPPIや空間学習能力の低下(統合失調症の中間表現形)が起こるかどうか検討する。3)ドミナントネガティブDISC1発現マウスの海馬神経幹細胞でのプライマリーシリアの形成、Wnt活性、細胞遊走の解析と行動解析 CAMKIIプロモーターにより、前脳(海馬を含む)でドミナントネガティブDISC1が発現するよう作成されたトランスジェニックマウスはPPIの低下など統合失調症様症状を呈することが報告されている(Hikida et al. PNAS 2007)。このドミナントネガティブDISC1をレトロウイルスにより海馬神経幹細胞特異的に発現させ、より限局した条件でDISC1機能異常を引き起こした状態でも同様に統合失調症様症状を呈するかどうか調べる。また、DISC1ノックアウトと同様に、プライマリーシリアの形成不全、Wnt活性亢進、細胞遊走異常がおきるか確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究に必要な分子生物学用試薬、実験マウス、レトロウイルス作成に必要な培養細胞用培地、抗生物質、ウシ血清や培養用ディッシュ、ウイルスベクター精製キット、細胞観察に必要な免疫組織染色用の抗体などを購入する。
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